銀河は銀河団により水素ガスをはぎとられる

銀河がガス欠になる理由

 銀河には水素ガスを豊富にもち、星形成が盛んな渦巻き型銀河系やアンドロメダ銀河もこの仲間です)と、水素ガスが無くなって星形成がほとんど行われない楕円型があります。
 現在の宇宙では銀河の半分、特に銀河団に所属するほとんどの銀河(中心付近にあるもの)は水素ガスが欠乏していますが、 宇宙年齢が半分くらい(約70億年前)の時には、80%くらいの銀河は水素ガスを豊富に持っていたことが分かっています。

 いったい、いつ、どこで、どのようにして銀河は水素ガスを失ったのでしょうか?

 写真はHSTが撮影した銀河団A2667(距離32億光年)です。
 銀河団A2667[ NASA, ESA, and J. -P. Kneib (Laboratorie d'Astrophysique de Marseille)]

 たくさんの銀河が写っていますが、左上にある青白い渦巻銀河にご注目ください。
 よく見ると、銀河から左下に青白い"しっぽ"が淡くのびています。 これは銀河団に向かって落ち込んでいく銀河が、銀河団の重力の影響(潮汐力)と銀河団ガス(1000万度〜1億度もあります)の圧力を受けて水素ガスをはぎ取られ、銀河から取り残された水素ガスから星が生まれている様子だと観測した天文学者たちは考えています (彗星が太陽風の影響を受けてしっぽを伸ばすのと似ているので、研究者たちはこの銀河に「彗星銀河」というニックネームをつけました)。
 こうした銀河ガスのはぎ取りの様子は別の銀河団でも観測されています。
 
 銀河は集まるにしたがって、水素ガスを失っていきます。 人間社会では将来、水素ガスの確保が重要になると予想されますが、銀河にとっても水素ガスを保持できるかどうかが運命の分かれ目となっています。

 なお、写真中央右にバナナのような形をした天体が写っていますが、これはさらに遠方の銀河が、A2667の重力レンズ効果を受けて、(見かけ上)変形したものです。


 原文は英語ですが HSTのプレスリリース をご覧ください。


2007.3.4記(石坂

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