偏光によって見えてくるもの

クェーサーの渦を覗き込む

 クェーサーの正体は銀河中心にある巨大ブラックホールに流れ込むガスの渦だと考えられていますが、 回りから流れ込む大量のガスとダスト(チリ)の壁に取り囲まれていて、中心部が直接は見えないことが多いです。

 今回、マックスプランク研究所の岸本真研究員らのグループがヨーロッパ南天文台ESOの望遠鏡VLTを用いてクェーサーを偏光観測することで、 中心部からの光を捉えることに成功しました。
 光は電磁波の一種ですが、反射する時に波の振動方向が変わり偏光します。 逆に偏光した光だけを通すような特殊なフィルタを用いて観測すると、反射光を効率よく見ることができます。
 岸本研究員らの観測は、クェーサーの周りに存在するガスやダストの壁に反射した中心光を捉えたものでした。 つまり、クェーサーを隠している壁を逆に”潜望鏡”として利用し、中心部を覗き込んだのです。

窓には偏光フィルムが貼っていあるが直接は見えない(科学館入り口)

床に反射した光で見ると、星座絵が浮かび上がる(同上)

 身近なところでは、反対に、偏光した光をカットするようなフィルムを眼鏡にし、水面で反射する光を抑え、水面下の魚を見やすくする釣り用のグッズが市販されています。
 また、展示改装した科学館の入り口には偏光を利用した巨大なオブジェがあります。 来館の折にご覧になってみてください。


●原文は英語ですがESOのプレスリリースをお読みください。

2008.7.27記(石坂

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