プラネタリウム「南天の星空」の制作

石坂千春

大阪市立科学館



概 要

2004年7月に導入された新システムを使ったプラネタリウム番組「南天の星空」を制
作したので、新システムの紹介を兼ねて、番組の制作方法を報告する。番組の制作
にあたっては、プラネタリウム本機、デジタルスカイビュー(バーチャリウム供法⊆辺
機器、統合制御システムそれぞれにプログラミングをし、制御することが必要である。


1.はじめに

 渡部ら(2005)[1]、飯山ら(2005)[2]で紹介しているように、新システムのプラネタリウムでは番組制作の手順が大幅に変更された。
 プラネタリウム本機(コニカミノルタプラネタリウム社製インフィニウムL-Osaka)、デジタルスカイビュー(五藤光学研究所社製バーチャリウム供法⊆辺機器(LED照明、DVDプレーヤー等)、統合制御システム(TRAX)それぞれに必要なプログラミングをし、一つの番組を組み上げる。
 本記事では、2005年3月〜5月に投影された番組「南天の星空」を題材に、番組制作をどのような手順で行うかを紹介する。 なお番組中で使用した画像素材の作成はコニカミノルタプラネタリウム社に委託した。


2.番組内容

 プラネタリウム番組「南天の星空」は南十字星の見つけ方、エキゾチックな南天の星座、 そして、南米チリに建設中の国際プロジェクト「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)」について紹介するものである。

 当番組では、

‖膵匈せ代の嵐の南洋→南十字の探し方
▲Ε襯襦淵┘◆璽坤蹈奪)や南極での星空→南天の星座の歴史
ALMA紹介→エンディング

という3つのテーマでショートプログラムを制作し投影した。


3.プログラミング

 前章で紹介した「‖膵匈せ代の嵐の南洋→南十字の探し方」を例に、プログラムの流れを紹介する。 このショートプログラムの内容は

1) インフィニウム、バーチャリウム兇瞭時をともに南緯20度経度131度、2005年5月5日21時に指定する。
2) バーチャリウムから嵐の南洋のパノラマを投影し、LED照明で雷を表現する。
3) 南十字、偽十字等の星座線をインフィニウムから投影する。

というものである。
 このような流れを、操作卓から一つのボタンを押すことで実現するためには、

.ぅ鵐侫ニウムを制御するCSVファイル(ここではnanten.csv)、
統合システムTRAXを制御するプログラム(ここでは#021)、
バーチャリウム兇鮴御するSFTファイル(ここではstorm.sft)、

が必要である。

3−1.CSVファイル

 CSVファイルはインフィニウムを制御するコマンドの集合体で「マクロ」と呼ばれる。 図1はCSVの編集画面である。CSVファイルではインフィニウムを制御するとともに、TRAX制御プログラムを呼ぶことができる。

図1.嵐の南洋と南十字星を投影するCSVファイル nanten.csv の編集画面



 図1中、6行目の[外部機器MICS]がTRAX制御プログラム#021を呼び出している。
 CSVの編集は、コンソール(操作卓)からプラネタリウムを立ち上げた状態で行う。コマンドは基本的にプルダウン・メニューからの選択制であり、数値はキーボードから入力する。
 編集の後、「保存」「転送」操作によって、コンソール上のボタンに登録される。

3−2.TRAX制御

 storm.csvから呼び出されたTRAX#021は次のような構成である(図2)。
1)EPTスクリプト130番を呼ぶ
2)プロジェクターのシャッターを開ける
3)LED照明を制御するPTNファイルから15番を呼ぶ

図2.TRAX#021の内容



 TRAXからは直接SFTファイルを指定することができないため、EPTを介して呼び出しをする。 ここではEPTの130番を呼んでいる。EPTの130番はバーチャリウム兇裡咤藤團侫.ぅstorm.sftを指定している。

 またLED照明は別のPC上の"Skylight"というソフトで制御している。 PTNファイルは演出用のパターンファイルで、TRAX#021から呼び出された15番パターンは、嵐の南洋における稲光を表現するものである(図3)。


図3.稲光を表現するLED照明演出パターン15番



3−3.SFTファイル

 バーチャリウム兇寮御プログラムについては、渡部(2005)[3][4]にほぼ準じているのでコマンドの意味についてはそちらを参照されたい。
 ここではEPT130番によってTRAXから呼び出されるstorm.sftの内容を掲載する。
 storm.sftでは嵐の音(Rain.wav, storm.wav)を背景に、荒波のパノラマ(storm.sls)を、コマ換えをしながら投影する(パノラマ一周のサイズは4096ピクセルである)。 その上にαチャンネルによって背景を透明にした帆船(ship.sls : ddsファイルのサイズは必ず1024×512でなければならない)を投影し、ドーム上、右から左へと移動させる。 嵐が終わった後に日時を指定し、南洋の島のパノラマ(island.sls)を投影している。
 SFTファイルの中で参照しているSLSファイル(storm.sls, ship.sls, island.slsなど)は、スライドの画像名を記述しているファイルである。 記述されている順番をframeで指定することにより、画像を投影する。


storm.sftの内容

################################################
#  storm and the southern cross                #
################################################
0:00:00  show resume

+0.2  scene init all
        system message "Setting ' Storm '"
        script slidesetDir \05spr_nanten\	
        slides is empty
        se is empty

+0.8	scene audio is Rain.wav
	se audio is storm.wav
	scene audio int 80

0:00:03	system message "Starting 'Storm'"

+0.5	vpPAN is vp_full_pan.x
	vpPAN slideset is storm.sls
	vpPAN slideset frame 1
	vpPAN int 0.01
+0.2	scene audio play
+0.2	vpPAN pos sph 0 0 0.01
	vpPAN scale 1 1 3
	vpPAN int 60 dur 3
	scene add vpPAN
+0.2	scene add se
	se audio int 80

0:00:05	se audio play

+1.0	sl1 is slideh
	sl1 slideset is ship.sls
	sl1 scale 18
	sl1 int 0
	sl1 slideset frame 1
+1.0	sl1 pos sph 40 30 100
	sl1 face eye
	scene add slides
+6.0	vpPAN slideset frame 2 dur 2
+1.0	sl1 int 100 dur 2
	slides add sl1
+1.0	sl1 pos sph 0 30 50 dur 12
+8.0	vpPAN slideset frame 3 dur 2
+1.0	sl1 pos sph -40 30 80 dur 12
+4.0	vpPAN slideset frame 2 dur 2
+1.0	vpPAN slideset frame 1 dur 2

0:00:34	sl1 int 0.01 dur 2

+8.0	scene audio int 0.1 dur 5
+1.0	vpPAN int 0.01 dur 4

0:00:47	scene init all

+1.0	domeincf is empty
	domef is empty
	pano is slidePan360
+0.1	scene fixed domeincf
	domeincf add domef
	domef att 180 -20 0
	pano att 0 0 0
	pano pos -45 0 -25
	pano scale 1 1 4
+0.1	domef add pano
+0.5	system message "panorama on"
	pano slideset is island.sls
+1.0	pano slideset frame 1
	pano int 0.01
+0.1	pano int 100 dur 5

0:00:52	system message "End of Storm"

+0.1	scene date 2005-05-05 12:00
	eye location -40.0 131.0 0 0 daily
+2.0	scene audio init

0:00:55	show pause

+0.1	pano int 0.01 dur 3
+3.0	scene init all
+1.0	show close

0:01:00	script end
##################################################



4.まとめ

 以上のように、新システムでは一つのプラネタリウム番組の制作にも何種類もの制御プログラムを書く必要がある。 インフィニウム(恒星投影機本体)、バーチャリウム供■味釘直般澄音響、TRAX、その他補助投影機それぞれに制御用のPCがあり、 各PCそれぞれに独自のプログラミングをする必要がある。 これはとても煩雑な作業となるが、一方、制作者の意図に応じて演出が臨機応変に可能となり、旧システムでは外部委託していた番組の制作を自力で行うことができるようになった。 今後、新システムに慣れてくれば、さらに質の高い番組製作が可能になるであろう。


参考資料

[1] 渡部、嘉数、石坂、飯山、川上 大阪市立科学館研究報告15号(2005) pp.109-110
[2] 飯山、嘉数、渡部、石坂 大阪市立科学館研究報告15号(2005) pp.111-116
[3] 渡部義弥 大阪市立科学館研究報告15号(2005) pp.117-126
[4] 渡部義弥 大阪市立科学館研究報告15号(2005) pp.127-130

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