長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告10,133-134(2000)



楽しい科学実験「ふしぎなふりこを作ろう」実施報告


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 Y字型振り子を斜めにすると、左右に振った振り子の軌跡が次第に変化して前後に振れるようになるというふしぎな動きになる。 6月の楽しい科学実験では、「ふしぎな振り子を作ろう」と題し、このふしぎな振り子の製作を行なったので報告する。

1.実施日時
1999年6月26日(土) 13時30分〜15時30分

2.参加対象・参加人数
 楽しい科学実験では、小・中学生を中心に、幼児から大人まで楽しめるように、特に参加対象の制限は設けていない。 ただ、このため工作はある程度簡略化しておく必要がある。 また、事前の申し込みや参加費も不要で、当日の来館者に自由に参加していただいた。
 当日は2時間の実施時間中に、約105名の方が参加された。

3.しくみ
写真1.振り子の取り付け部分
 このふしぎな振り子は、Y字型の振り子を45度斜めに取りつけてある。
 そもそも糸をY字型にした振り子では、左右に振らせた場合と前後に振らせた場合で、揺れに有効な糸の長さが違うため、左右と前後の揺れの周期が少し異なる。 ちなみに、このように縦軸と横軸で異なる周期を持つ運動が描く軌跡はリサージュ図形という。 このような振り子の動きは、例えば左手前から振り子を振らし始めると、最初のうちは左手前と右奥の間で揺れているが、次第に左右と前後の揺れの位相がずれてきて、そのうち左奥と右手前の間で揺れるようになる。 そしてさらに時間が経つと、また左手前と右奥の間で揺れるようになり…、と揺れの方向がいろいろ変化する。 この変化は、左右と前後の振動周期が近ければゆっくりと変化し、振動周期が大きく異なっていればすぐに変化する。
 今回のふしぎな振り子は、このY字型振り子の2ヶ所の吊り下げ位置を、左右ではなく45度斜めに並べることにより、左右に振らした振り子が、次第に前後に揺れるようになり、また左右に揺れるようになり…、となるように工夫した。

4.工作内容
 楽しい科学実験は、参加無料・申し込み不要の行事であることもあり、今回は材料として牛乳などの1リットルの紙パックと凧糸、ナットを材料とした。 紙パックは、中をよく洗って乾燥させたものを一人あたり1個半(そのままのもの1個と縦に半分に切ったものを1個)使用した。
 紙パックは振り子全体の骨組みとし、切らなかったものを柱、縦半分に切ったものは更に切り込みを入れ、振り子の取り付け部として柱用の紙パックにガムテープで貼り付けた。
写真1.完成した「ふしぎな振り子」
 ここにY字振り子をぶら下げるわけであるが、特に小さい子どもでは、糸を指定の長さで結ぶのは非常に難しい。 そこで、少し長めの凧糸を用意し、その片方の端に近いところを乾電池のまわりに一周巻いて結んでもらった。 これで一端に一定の大きさの輪を作ることができる。 さらに、この輪の周の半分より少し短い長さに切った短冊状の紙(これも紙パックを利用)に両面テープを貼り付けたものを予め用意しておいた。 この短冊の長さ方向のまわりに、先ほどの凧糸の輪をまわした状態で貼り付けることにより、一定の大きさのY字型振り子を作ることができる。 あとは、凧糸の他端にナットをくくりつければ一応の完成である。
 ただし、このままではバランスが悪く、倒れてしまうので、家に帰ってから柱になっている紙パックの中に石などを入れて、バランスをとってもらうようにした。 また、当日は色紙やカラーペンなどを用意し、自由に飾り付けしてもらった。

5.考察
 この振り子のしくみは、やや難しいので、当日はしくみを書いたリーフレットを配布した。 また、この動きは、比較的子どもより大人の方が不思議に感じる方が多いようだった。 このため、今回は楽しい科学実験として行なったが、通常の科学教室として行なう方が適切であると感じた(2000年4月に科学教室として実施)。