長谷川能三のHP月刊『うちゅう』窮理の部屋  

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窮理の部屋 46
50cl

写真1.ミネラル
ウォーターのラベル
 先月号でヨーロッパへ行ったと少し書きましたが、おなかの弱い私はずいぶんミネラルウォーターのお世話になりました。 パリからアムステルダムへ行く列車の中でもミネラルウォーターを飲んでいて、ふとペットボトルのラベルに書いてある「50cl」という文字が目にとまりました。 しばらくぼんやりと「50cl」という文字を眺めていて気がつきました、「あっ50センチリットルかぁ」。
写真2.日本で
売られているもの
 「センチ」というと「センチメートル」の略で使うことが多いですが、「センチ」に長さの意味はありません。 例えば「キロ」というのが、質量(重さ)の単位である「キログラム」に付いていますが、長さの単位である「キロメートル」にも付いています。 1キログラムは1000グラム、1キロメートルは1000メートルということからもわかるように、「キロ」という言葉には1000という意味がある、…というより1000という意味しかないのです。
 では「センチ」はというと、100センチメートルが1メートル、1センチメートルは0.01メートルですから、センチは100分の1の意味です。 ですから、ミネラルウォーターのラベルにあった「50cl」というのは、100分の50リットル、つまり0.5リットルのことなのです。
写真3.ペットボトルの
底にあった50clの刻印
 旅先でペットボトルはじゃまですので、ラベルだけはがして持って帰ってきたのですが、日本で同じミネラルウォーターを探すと、ラベルに「500ml」(ミリリットル)と書かれていました。 そういえば、日本ではミリリットルがよく使われていますね。 でもよくよく探してみると、ペットボトルの底の方に「50cl」という刻印を見つけました。 おそらくボトルに入った状態で輸入しているんでしょう。
表1.単位の接頭語
大きさ接頭語
記号読み
1024Yヨタ
1021Zゼタ
1018Eエクサ
1015Pペタ
1012Tテラ
109Gギガ
106Mメガ
103kキロ
100hヘクト
10daデカ
1/10dデシ
1/100cセンチ
10-3mミリ
10-6μマイクロ
10-9nナノ
10-12pピコ
10-15fフェムト
10-18aアト
10-21zゼプト
10-24yヨクト
 このような単位の頭につける接頭語は、右の表のように10-24(1兆分の1のさらに1兆分の1)から1024(1兆倍の1兆倍)まで3桁ごとと、100分の1、10分の1、10倍、100倍について決められています。 まぁ、この表の上の方や下の方は私でもなじみがありませんが、真ん中あたりはみなさんも聞いたことのあるものが多いでしょうね。
 デシというと、小学校で体積の単位としてデシリットルというのを習います。 でも、それ以降使ったことがないような…。 センチやミリはメートルの頭につけてよく使います。 その下のマイクロやナノ、ピコはどうでしょうか? 最近ではダイオキシンなどのニュースで耳にすることがあるかもしれませんね。
 反対に大きな方で、10倍のデカはどうでしょうか? 私の田舎の地場産業は靴下製造なのですが、そういえば靴下10足で1デカと呼んでいました。 でもそれ以降、デカを使っているのは聞いたことがありません。 ヘクトは、小学校で習った面積の単位にありました。 100m2が1アールで、100アールが1ヘクタール、つまりヘクト・アールなのです。 また、最近天気予報を見ていると、気圧をヘクトパスカルという単位で表わしていますね。 少し前まではミリバールという単位が使われていましたが、パスカルという単位を使うのにあたって、それまで使っていたミリバールがちょうど100パスカルと一致することから、これまでと同じ数字を使えるようにヘクトパスカルが使われています。
 その上のキロはおなじみですが、メガやギガはいかがですか。 パソコンを使われている方は、ハードディスクの容量などで聞いたことがあるでしょうね。 ところが注意しないといけないのが、パソコン関係で使われているキロ・メガ・ギガはそれぞれ103、106、109でないこともあるのです。 10進数を使っている私たちにはキッチリした数字だと思っている1000も、コンピュータの世界ではちょっと中途半端な数字です。 そこで、コンピュータの世界でキッチリした数字である1024(=210)を1キロとすることがあるのです。 まぁ大した違いは…と思うのですが、1メガを1024キロ、1ギガを1024メガとすると、1ギガは1073741824になります。 将来、1テラバイトのハードディスクなんかが登場すると、1000を使うか1024を使うかで、1割も違ってしまうことになります。
大阪市立科学館 友の会 『月刊うちゅう』 2002年5月号