長谷川能三のHP月刊『うちゅう』街角ウォッチング  

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堂島薬師堂
 梅田から科学館へ歩いて来る途中、四つ橋筋の東側に面して堂島アバンザというビルがあります。 ジュンク堂書店が入っているビルというとピンと来る人も多いかもしれませんね。 その堂島アバンザの東側、四つ橋筋からは裏側になりますが、黒い三角形の板を組み合わせたモダンなドームがひっそりと建っています(地図)。 この建物、その作りからは想像しにくいのですが、入り口に「堂島薬師堂」と書いてあります。 堂島という地名も、この薬師堂があったからという説もあるとのことです。
 ところでこの三角形の板の並びをよく見ると、ひとつの頂点に6枚の三角形の板が集まっているところと、5枚の三角形の板が集まっているところがあります。 サッカーボールは五角形と六角形の組み合わせでできていますが、その五角形を5枚の三角形に、六角形を6枚の三角形に切り分けて、全体に少し尖らせると、ちょうどこの形になるのです。
 こんなサッカーボールのような形のドーム設計では、バックミンスター・フラーという建築家が有名で、1985年に発見された炭素原子60個がサッカーボール型に集まった分子は、彼の名をとってフラーレンと呼ばれています。 発見者のクロトー、スモーリー、カールの3人は1997年にノーベル化学賞を受賞していますが、バックミンスター・フラー自身は、 化学物質に自分の名が使われることを知ることもなく、1983年に亡くなっています。
 直径0.7ナノメートルのフラーレンから100メートルを越えるドームまで、サッカーボール型といってもいろいろな大きさのものがありますが、科学館のプラネタリウムにもサッカーボール型が隠れているのをご存じでしょうか? プラネタリウムの本体には、たくさんのレンズがいろいろな向きに取り付けられていますが、恒星を映すレンズは全部で32本あります。 この32という数は、サッカーボールの五角形(12枚)と六角形(20枚)をあわせた数。 プラネタリウムは夜空をサッカーボール型に切り分けて、映し出しているのです(追記:2004年の改修後のプラネタリウムは、全天を12分割して投影しています)。


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