りんごを使って月までの距離を求める
『月と林檎』の解説
1.はじめに
月と林檎の主旨のひとつは、月は地球に向かって落下を続けているのだが、月と地球の距離が大きいため、その落下する距離はびっくりするくらい小さい(毎秒僅か1.36mm)ということでした。
この距離は地球に対して月が1秒間に移動する距離(1020m)に比べてみるとずいぶんと小さいのですが、1.36mm/1020mという比は、1秒間に月移動する角度(2.66×10-6ラジアン)のちょうど半分になってます。
ここではまず、どうしてちょうど半分になるのか解説しましょう。
2.半分になる理由
地球の公転運動は無視し、月は地球を中心に円運動しているとします。月の公転周期(1恒星月)をT、月の軌道半径をrと置くと、月の公転速度vは、
となります。したがって、t秒間に月が移動する距離lは、
となります。
また、地上での重力加速度をg、地球の半径をRと置けば、冲秒間に月が地球に向かって落下する距離hは
です。
一方、原点Oに地球を置き、rだけ離れたP点に最初月があったとします。P点にある月はOPと垂直の向きの速度を持っています。もし地球と月との間に重力が働かなければ、月は冲秒後にP’点に移動するとします。△OPP’は明らかに∠Pが直角である直角三角形となります。そして∠Oの大きさをθと置けば、PP’の長さlはrθに等しくなります。
実際には、重力があるので、月は冲秒後にはOP’上の点Hにあるはずです。OHはrに等しく、HP’はhに等しくなります。
ここで△OPP’に三平方の定理を用いると、
より
となります(ただし、θ<<1を使った)。
したがって、
となり、h/lはθのちょうど半分になります。
3.月までの距離を求める
h/lは、
とも表わせるので、
を用いると、
となり、ケプラーの第3法則が導かれます(参考:別の導き方)。この式にgとRとTを与えれば、月までの距離rが求まります。
gの測定には、地上でもの(たとえばリンゴ)を落とすことでできます。