『科学談話室』の話題より
消 滅 と い う 進 化
2000/02/09 話題提供
2000/02/09 最終更新
話題一覧


[danwa:0176] 消滅という進化
Date:Wed, 9 Feb 2000 22:31:12 From: Ando S.
Andoです。

わたしのひらめきをもうひとつ。(もう一つは、 「[danwa:0168] 地球史と生命史」 を読んでください)

小学生か中学生のころ、鯨の体の中には「退化」した後足の骨が残っている ことを習い、生命の不思議さを思ったことがあります。このとき、鯨の後足 は使わなくなったために「退化」したのだと教えられました。しかしあると き、TVの番組で、人間も含めて動物の子どもがなぜ可愛いのか(たとえば、 ころころとした子犬を思い浮かべてください)ということについて話してい るのを見る機会がありました。それは、子どもは親に保護してもらう必要が あるからかわいいのだというのでした。
わたしは、この説明にものすごく感動させられました。そして、だったら鯨 の後足も決して「使わないから」というような消極的な理由で退化したので はなく、より速く泳ぐために積極的に引っ込めたのではないかと考えるよう になりました。それ以来、「退化」という言葉が私にはとてもうっとうしい ものに感じられてなりません。

鯨の後足以外の例として、暗い洞窟で生息するある蛇は、目が「退化」して 無いそうです。理由は、暗いところに棲んでいるから眼がいらなくなった、 というのです。しかし、わたしは、この理由も正しくないのではないかと思 います。
最近は見られなくなった光景ですが、猫が真暗な床下に逃げ込んだとき、姿 は見えないのに目だけがピカッと光って見えるということを経験されたこと があるでしょう。これと同じで、洞窟に棲む蛇は、眼があるといくら暗闇に ひそんでいても外敵に発見されるので、自ら積極的に目を消滅させたとは考 えられないでしょうか。

進化における「退化」という現象を、使わなくなったから無くなったという ふうにとらえるか、あるいは環境に適応するために積極的に消滅させたと見 るかでは、進化そのものに対するとらえ方もちがってくるように思うのです が、どう思われます?

こんなことを投稿する気になったのは、実は、このわたしの考えと同じこと を考えている人がいることを知ったからです。それは、鳥羽水族館企画室長 の中村さんという方です(私は、面識はまったくありません)。
その中村さんの書かれたものを、きょう、偶然に読みました。中村さんは、 毛もない、足もない、耳たぶもない、哺乳類としては不気味なはずのイルカ の体形を、しかし美しいと語られたあと、さらにつぎのようにペンを進めら れています。

「これを退化という後向きな一言でかたづけてしまうのは気が引ける。彼ら の足や毛は、海という新しい環境で生きるために、消滅という形の進化をし たのだ。イルカの美しさとは、いさぎよい進化による、無駄のない洗練され た美しさなのである。」

Ando S.


・・・さて、この先 話はどうなるのか?お楽しみに!・・・
あなたもこの議論に参加しませんか?  『科学談話室』に入室希望の方は参加案内をご覧下さい。
入室希望の方はこちら 『科学談話室』の話題一覧





科学あれこれ
ホームページへ