『科学談話室』の話題より
速 度 と 質 量
2001/02/14 話題提供
2001/03/20 最終更新
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この話題は 光の速さ  からの続きです 


[danwa:0432] 速度と質量
Date:Wed, 14 Feb 2001 18:54:28 From: 浜口
 浜口です.

 すこし細かい話になりますが……

[danwa:0414]浜口)
 いわば,電子は「速度増加」ではなく「質量増加」という形でエネルギー を貯め込んでいくわけですね.
と私は書いたんですけれども,これは議論の余地があって,「質量が速度に依 存する」という言い方はよくない,とする立場もあります.

「質量が速度に依存する」とする立場とは,

            m0
    m(v)=――――――――――
        {1−(v/c)2}1/2

という量を質量と呼ぼうというものです.
(その場合m0を静止質量と呼びます)

 いっぽうそれに対して,
「m0を質量と呼び,上のm(v)みたいな量には何の名前もつけない」
とする立場があります.
(したがって質量は増加したりはしない)

 今は後者のほうが多数派のようです.

                           浜口


[danwa:0438] Re: 速度と質量
Date:Fri, 16 Feb 2001 23:34:09 From: 浦田
浜口さん、みなさん、こんばんわ。浦田です。

浜口さん
「質量が速度に依存する」とする立場とは,

            m0
    m(v)=――――――――――
        {1−(v/c)2}1/2

という量を質量と呼ぼうというものです.
宇宙航行ロケットのについてです。

ロケットの到達速度は

v=ulog(M0/M)
 u :ジェットの噴射速度
 M0:速度0の時の質量
 M :質量
uが速いほうがいいので、水素等を噴射するというアイデアがあります。

 もし、水素じゃなく電子を加速して噴射した場合、上記の計算による質量を噴 射したことになるのなら得した気分になりますね。
 もしそうならこの計算以上の速度に到達できるかも。


[danwa:0440] Re: 速度と質量
Date:Wed, 28 Feb 2001 21:50:21 From: 長谷川
浜口さん、談話室のみなさん、こんばんは。長谷川です。

浜口さん [danwa:0432]
「質量が速度に依存する」とする立場とは,

            m0
    m(v)=――――――――――
        {1−(v/c)2}1/2

という量を質量と呼ぼうというものです.
(その場合m0を静止質量と呼びます)
前から疑問だったのですが、「質量が速度に依存する」とする立場では、とい うかどちらの立場でもいいのでしょうが、物体が光速に近づくと、近くの天体 (例えばブラックホール)から受ける重力はどうなるのでしょうか?

これが、物体の速度に関係しないのなら、
「m0を質量と呼び,上のm(v)みたいな量には何の名前もつけない」
と定義しようという考えもうなずけるのですが。


[danwa:0442] Re: 速度と質量
Date:Thu, 8 Mar 2001 19:22:58 +0900 From: Bi.Bi.
長谷川さんは[danwa:0440]で書きました:
>浜口さん [danwa:0432]
「質量が速度に依存する」とする立場とは,

            m0
    m(v)=――――――――――
        {1−(v/c)2}1/2

という量を質量と呼ぼうというものです.
(その場合m0を静止質量と呼びます)
前から疑問だったのですが、「質量が速度に依存する」とする立場では、とい うかどちらの立場でもいいのでしょうが、物体が光速に近づくと、近くの天体 (例えばブラックホール)から受ける重力はどうなるのでしょうか?
ブラックホールの質量に対してmが無視できれば自由落下ですね。
すなわち、受ける重力は同じ、と言っていいのでは?

しかし、mが無視できない時はどうなるんでしょう?

特殊相対論だけで議論できれば簡単かもしれませんが、これは無理でしょう。
なぜなら、特殊相対論は重力を含んでいないから、一般相対論的な議論が必要と思います。
どうしたらいいんでしょうね。

Bi.Bi.


[danwa:0443] Re: 速度と質量
Date:Fri, 9 Mar 2001 13:16:44 From: 浜口
 浜口です。こんにちは。

[danwa:0440]長谷川さん)
前から疑問だったのですが、「質量が速度に依存する」とする立場では、とい うかどちらの立場でもいいのでしょうが、物体が光速に近づくと、近くの天体 (例えばブラックホール)から受ける重力はどうなるのでしょうか?

[danwa:0442]Bi.Bi.さん) 
ブラックホールの質量に対してmが無視できれば自由落下ですね。
すなわち、受ける重力は同じ、と言っていいのでは?
 たしかに,与えられた重力場中での質点の運動は,質点の質量に依存しませ ん。(初期条件が同じならどの質点も同じように運動する。等価原理です)

 Bi.Bi.さんは「運動が同じなら重力は同じと言ってよいのでは」と述べてお られますが,それは早計では。
 長谷川さんのおっしゃっているのは,加速度ではなく,力の大きさのことで すよね。(何[N]かということ)

 つまるところ,問題は,「力をどうやって測定するか」にかかっていると思 われます。
 加速度以外の方法,たとえば,静止した上皿秤(台所のはかり)に物体をのせ て重さを測る,などを考える必要があります。

 静止した上皿秤に物体をのせましょう。
 物体の速度をうんと大きくしたいのですが,上皿秤のうえにとどまらなけれ ばならないので,高速回転運動をさせることにします(コマのように)。
 物体の各点は高速運動をしているので,m(v)の値は増加します。

 問題は
「上皿秤にのせたコマを高速回転させると,秤の表示は増加するか?」
ということになりそうです。
 うーん……

                             浜口


[danwa:0444] Re: 速度と質量
Date:Sat, 10 Mar 2001 17:41:47 From: Bi.Bi.
[danwa:0443]浜口さん:
 静止した上皿秤に物体をのせましょう。
 物体の速度をうんと大きくしたいのですが,上皿秤のうえにとどまらなけれ ばならないので,高速回転運動をさせることにします(コマのように)。
 物体の各点は高速運動をしているので,m(v)の値は増加します。
なるほど、そうすれば力が測れそうですね。

ずいぶん昔ですが、日本語ペラペラのドイツ人がセミナーで話していました。
たしか回転体どうしの厳密解でした。

同じ方向に回転しているものどうしと反対向きとで 斥力あるいは引力になるという話でした。
どちらが斥力でどちらが引力かは忘れましたが、 これが空飛ぶ円盤だ、などと冗談を言っていたのを覚えています。

ということは、どういうこと?

Bi.Bi.


[danwa:0445] Re: 速度と質量
Date:Tue, 13 Mar 2001 17:03:20 From: 長谷川
談話室のみなさん、こんにちは。長谷川です。

浜口さん [danwa:0443]
 問題は
「上皿秤にのせたコマを高速回転させると,秤の表示は増加するか?」
ということになりそうです。
まさにそうです。
私の疑問をうまいモデルにしていただきました。

で、どうなんでしょう?



ところで、もう10年くらい前になるでしょうか、右回りのコマが軽くなるという のが、Phys. Rev. Letter という論文誌に載って、話題になりましたね。

結局、他で追試実験しても、そのような結果はえられないということで、否定 されましたが…。

ちょっと、そんなことを思い出してしまいました。


[danwa:0448] Re: 速度と質量
Date:Thu, 15 Mar 2001 10:06:35 From: 浜口
 こんにちは.浜口です.

[danwa:0444]Bi.Bi.さん)
ずいぶん昔ですが、日本語ペラペラのドイツ人がセミナーで話していました。
たしか回転体どうしの厳密解でした。
 いったい何をどうやって計算したんだろう……?
 ちょっと見当がつきません.A^_^;

[danwa:0445]長谷川さん)
まさにそうです。
私の疑問をうまいモデルにしていただきました。
で、どうなんでしょう?
 一般相対論は
(1)「重力場方程式」
(2)「運動方程式(測地線の方程式)」
の2つが基本法則だと思うんです.

 粒子の運動方程式(2)は,粒子がどんなものであるか(質量がいくらであると か自転しているとか)には無関係なので,自転の影響は運動方程式(2)からは計 算しようがないように思われます.

 そこで逆手をとって,自転するコマを重力源として考えてみることにします. (自転するコマのつくる重力場が強くなるのか弱くなるのかがわかれば,反作 用として,重力源(コマ)の受ける力(?)がどうなるかもわかるだろう)


 原点にコマを置き,ためしに,北極方向の遠方の一点Pにおける重力場を調 べてみます.

             P
             ・
             ・
             ・
             ・
             ・
             ・
             ・
             |
           / ̄| ̄\
          [\___/]
           \___/
             |

 手元にある本でカー解(線素の式)を探します……ごそごそ……みつけました. (佐藤勝彦『相対性理論』P156. りろん物理サークルのテキストとして使用中 の本ですね)

 その式でθ=0(北極方向の点Pなので)とおいて,「シュバルツシルト解で θ=0とおいた式」と比べてみますと……しばし計算……ふうむ

 シュバルツシルト解との違いは,シュバルツシルト解に現れる定数R (=2GM/c2)を,

              1
     R → R×―――――――
           1+(a/r)2

のように書き換えた形になっていることでした.
 ここで定数aは角運動量Jに比例する量です(a=J/Mc).

 意外なことに,角運動量には定数Rを小さくする効果があることがわかり ます.
 もともと定数Rは重力源の質量Mに比例しますから, 『重力源の自転は(軸方向では)重力場を弱める』 といえます.
(ほんとかな.だんだん自信がなくなってきた)

 反作用を考えれば,自転するコマが軸方向の相手から受ける重力は,回転が 激しいほど弱くなる,ということになる……のかな.うーん.(@_@)

                             浜口


[danwa:0450] Re: 速度と質量
Date:Fri, 16 Mar 2001 13:39:31 From: Bi.Bi.
[danwa:0448]浜口さん
 こんにちは.浜口です.

[danwa:0444]Bi.Bi.さん)
ずいぶん昔ですが、日本語ペラペラのドイツ人がセミナーで話していました。
たしか回転体どうしの厳密解でした。
 いったい何をどうやって計算したんだろう……?
 ちょっと見当がつきません.A^_^;
たぶんこんなことだろうと思います。
カー解を2つ足し合せたのではないかな、と思います。
アインシュタイン方程式は線形でないので、これは解とならない。
そこで、初期条件として2つのカー解の線形和を採用し、時間発展を求める。
そうすれば2つの回転の中心が、 離れるとかくっつくということが議論できるだろう。

ただし、これは全くの想像です。

 手元にある本でカー解(線素の式)を探します……ごそごそ……みつけました. (佐藤勝彦『相対性理論』P156. りろん物理サークルのテキストとして使用中 の本ですね)

 その式でθ=0(北極方向の点Pなので)とおいて,「シュバルツシルト解で θ=0とおいた式」と比べてみますと……しばし計算……ふうむ

 シュバルツシルト解との違いは,シュバルツシルト解に現れる定数R (=2GM/c2)を,

              1
     R → R×―――――――
           1+(a/r)2

のように書き換えた形になっていることでした.
 ここで定数aは角運動量Jに比例する量です(a=J/Mc).

 意外なことに,角運動量には定数Rを小さくする効果があることがわかり ます.
 もともと定数Rは重力源の質量Mに比例しますから, 『重力源の自転は(軸方向では)重力場を弱める』 といえます.
いいのかなー?
θやφ方向の変化も議論しなくてはならんように思うのですが。
正確には曲率で比べるといいんでしょうが、あいにく手元の教科書にはのっていないようです。
計算は単純ですけど、うんざりしますね。

Bi.Bi.


[danwa:0451] Re: 速度と質量
Date:Fri, 16 Mar 2001 17:41:01 From: 浜口
 浜口です.こんにちは,

[danwa:0450]Bi.Bi.さん)
カー解を2つ足し合せたのではないかな、と思います。
アインシュタイン方程式は線形でないので、これは解とならない。
そこで、初期条件として2つのカー解の線形和を採用し、時間発展を求める。
 ふむふむ……でも,足すって,どんな座標系で,何を足すのん?
 うーん,ちょっと想像がつきません.(;_;)



 とりあえず,私の議論にもどります([danwa:0448]).

[danwa:0450]Bi.Bi.さん)
いいのかなー?
θやφ方向の変化も議論しなくてはならんように思うのですが。
 あ,もちろん,そうです.
「少なくとも軸方向では」というつもりで書きました.(^_^ゞ

 赤道面上(θ=90度)で遠方を調べてみたのですが,シュバルツシルト解とは 質的に異なるようで,単純に比較することができません.
 どういうことがいえるのか,もう少し考えてみます.



 ところで,私が述べた([danwa:0448])

『重力源の回転は,軸方向では,重力場を弱める』
(誤解のないように括弧はとりました)

という効果について試算してみました.

 半径D=10[cm],質量M=1[kg]のリングが毎秒1000回転しているとします.
 r=1万[km]として,因数

        1
     ―――――――
     1+(a/r)2

の値を概算してみます.

 J=M×D2×ω,ω=2π×1000 より,
 a=J/Mc=D2×ω/c =(0.1)2×2π×1000/3×108 ≒2×10-7

 したがって,因数と,1との差は,


        1
  1− ―――――――≒(a/r)2
     1+(a/r)2
            ≒(2×10-7/107)2
            ≒4×10-28


 うわーこれは小さい!
「10の28乗」分の1の重さの変化なんて測れないだろうな.A^_^;

                             浜口


[danwa:0452] Re: 速度と質量
Date:Tue, 20 Mar 2001 14:24:53 From: Bi.Bi.
浜口さん、みなさん、こんにちは。Bi.Bi.です。

[danwa:0451]浜口さん
カー解を2つ足し合せたのではないかな、と思います。
アインシュタイン方程式は線形でないので、これは解とならない。
そこで、初期条件として2つのカー解の線形和を採用し、時間発展を求める。
 ふむふむ……でも,足すって,どんな座標系で,何を足すのん?
 うーん,ちょっと想像がつきません.(;_;)
2つの点電荷q、qが作る電場Eは それぞれがつくる電場E,Eの和でいいですよね。
E=E+E

カー解の足し算はこれと同じイメージです。
重力場(計量テンソル)自体は座標に依存しませんが、 具体的に足し算する時はそれぞれ同じ座標系で成分表示しなければなりません。
電場を足し算するときも同様ですね。
とりあえず,私の議論にもどります([danwa:0448]).

[danwa:0450]Bi.Bi.さん)
いいのかなー?
θやφ方向の変化も議論しなくてはならんように思うのですが。
 あ,もちろん,そうです.
「少なくとも軸方向では」というつもりで書きました.(^_^ゞ
浜口さんが採用されたカー解の成分にはdt dφの項があり、 これが気持ち悪いんですよね。
測地線の方程式には計量の成分の微分が効いてくるので この項を本当に捨てて議論していいのか?
と持ち悪い。でも、この項は(sinθ)で効いているので 無視してもよさそうです。

そこで、実際にこんなことを計算してみました。
θ=0の無限遠方から初速度0でテスト粒子を落とす、 原点に到達するまでの固有時を求める。
そうすると、上記で危惧した項は効かず、 シュワルツシールド解で得られるものでいいですね。
結果は、角運動量が大きいほど遅くなります。
つまり、角運動量が大きいほど重力は小さい、 浜口さんがおっしゃっていることと同じですね。

ただし、無限遠方からの時間は無限大になるので、ある一点を通過してから原点に 到達するまでの時 間としました。 すなわちr=rからr=0まで動くのに必要な時間の比較で、 次式で与えられます。


      2r13/2
  τ=―――――――
    3cR(a)1/2


ここで、

               1
     R(a)=R×―――――――
             1+(a/r)2



     R=2GM/c2

私は次のような単純なことを今まで思っていました。

アインシュタイン方程式はエネルギー運動量テンソルを与えた時に 重力場を決定する方程式だから、 エネルギー源が大きくなれば重力も強くなる。すなわち回転エネルギーが 大きくなれば重力も大きくなる。
しかし、こんな単純なものではないようですね。

 半径D=10[cm],質量M=1[kg]のリングが毎秒1000回転しているとします.
 r=1万[km]として,因数
     ・・・(中略)・・・
 うわーこれは小さい! 
「10の28乗」分の1の重さの変化なんて測れないだろうな.A^_^;
なるほど小さいですね。
りんごのあるなしだけの差を測るのも大変でしょうね。
たとえ、りんごまでの距離をもっと近づけたとしてもやはり大変ですね。

Bi.Bi.


・・・さて、この先 話はどうなるのか?お楽しみに!・・・
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