猛スピードで疾走する大質量星

スピード違反の星、発見!?

 ヨーロッパ南天文台ESOの超大型望遠鏡VLTが時速260万km(秒速720km!)という猛スピードで移動する恒星を発見しました。

 発見された星はHE0457-5439 という名前で、 南天のかじき座領域、地球から20万光年の距離(銀河系の外側)にあります。
 太陽の8倍という質量を持っており、推定年齢約3000万年の若い星です(太陽は46億歳です)。
猛スピードで疾走する星(想像図)[ESO]
 このような若い星は、銀河系の外側で生まれることはありませんし、時速260万kmなどという猛スピードを出すことはありませんから、 どこか別の場所で生まれたものが、何かのキッカケで飛び出した、と考えられます。

 天文学者は最初、銀河系中心の巨大ブラックホールによって加速されたのかもしれない、と考えましたが、 銀河系中心からその星の現在地まで時速260万kmで移動すると1億年ほどかかってしまい、星の年齢と矛盾します。

 では、この星はどこで生まれたのでしょうか?

 かじき座の近くには銀河系の伴銀河である大マゼラン雲があります。 星の動きを調べてみると、HE0457-5439はどうやら大マゼラン雲から飛び出してきたようです。 大マゼラン雲の距離は銀河系中心から16万光年。 HE0457-5439は銀河系中心よりもずっと大マゼラン雲に近いですから、大マゼラン雲から飛び出したとすると星の年齢との矛盾もありません。

 では、大マゼラン雲にも巨大なブラックホールがある、ということなのでしょうか?
 それはまだ確定していません。 天文学者は大マゼラン雲に巨大なブラックホールがあるかどうか調べる観測を計画しています。

 いずれにせよ、発見されたHE0457-5439はスピードの出しすぎです。 銀河系や大マゼラン雲はこのような高速の星を重力で引き止めることはできませんので、 この星はこのままはるか彼方へと飛び去っていくことになります。


※原文は英語ですがESOのプレスリリースをご覧ください。

2005.11.10記(石坂





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