復活する銀河団ガスの電波放射

銀河団衝突によるガスの再加熱

 この画像をご覧ください。
銀河団Abell1033の多波長合成画像[X-ray: NASA/CXC/Univ of Hamburg/F. de Gasperin et al; Optical: SDSS; Radio: NRAO/VLA]
 これはAbell1033という銀河団を、いろいろな波長で観測した画像を合成したものです。
 青い部分は銀河が多いところ、赤紫色の部分は高温の銀河団ガスが多く、X線が強いところです。
 画像のまん中すこし下のところ、赤紫色の部分と青い部分のさかい目あたりに、横にのびた青緑色の部分があります。
 ここは電波を強く出しているガスです(画像の左がわのところにも「」の字型をした電波の強いガスが見えます)。

 ガスが電波を放射できるのは数100万年ほどで、エネルギーの注入がなければ電波を出さなくなります。 画像左がわの「く」の字型のガスは、銀河中心にある巨大ブラックホールから吹き出したジェットで、元々、ブラックホールから多大な運動エネルギーを受け取って電波を放射しています。

 ところが、画像まん中すこし下の電波を出しているガスには、巨大ブラックホールのようなエネルギー源がありません。
 なぜ、電波を出しているのでしょう?

 研究者たちは、銀河団どうしの衝突が起きて、ガスにエネルギーが再注入されたのではないか、と考えています。
 2つの銀河団が衝突すると、銀河は通り過ぎますが、銀河団の中のガスどうしはすり抜けることができず、合体します。
 上の画像を見てみると、たしかに、銀河の多い、青い部分は上下(南北)に2か所あるのに、ガスの多い赤紫の部分は一つにまとまっています。
 どうもAbell1033銀河団は、もともとは2つあった銀河団が衝突した直後のようなのです。

 銀河団ガスがぶつかると衝撃波が生じ、ガスが圧縮されたり、加熱されたりします。
 電波を出しているガスは、もともとは巨大ブラックホールから吹き出て、いったん冷えてエネルギーを失った後、銀河団の衝突によって、再びエネルギーをもらって電波を出すようになったのではないか、と研究者は考えています。
 そして、この復活した電波ガスのことを「不死鳥」と名づけました。

 "不死鳥"電波ガスも、数千万年でエネルギーを失います。
 逆に言うと、"不死鳥"電波ガスをもつAbell1033銀河団は、衝突から数千万年たっていない、合体ホヤホヤということになるのです。

★原文は英語ですがNASAのプレスリリースをご覧ください。

2015. 8.30記(石坂

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