巨大ブラックホールのジェット

巨大ブラックホール、ジェット噴射!

 銀河の中心部には巨大なブラックホールがあり、銀河の進化とも密接にかかわっています。 M87銀河中心の巨大ブラックホールから噴射するジェット[NASA, ESA, D. Batcheldor and E. Perlman (Florida Institute of Technology), the Hubble Heritage Team (STScI/AURA), and J. Biretta, W. Sparks, and F.D. Macchetto (STScI)]

 右の写真はハッブル宇宙望遠鏡HSTが撮影したものですが、銀河中心の巨大ブラックホールは「ジェット」と呼ばれる壮大なガスの噴出をしていることがあります。
 また、ブラックホールの周りには、ブラックホールに落ち込むガスがを作っています。

 今回、アメリカ航空宇宙局NASAの研究者らのグループが、距離の違う巨大ブラックホールのジェットのようすを調べました。

 すると、渦の回転方向と、ブラックホール本体の自転方向が、同じ場合(順回転)と逆の場合(逆回転)では、ジェットの保有率が違うらしいことが分かりました。
 順回転のブラックホールの場合は、ジェットを保有しているものが少なく、逆回転の方が、立派なジェットを見せていたのです。 これは、逆回転では、渦の一番内側とブラックホールの間に広い空間ができ、ジェットを作りやすいのに対し、順回転では、渦がブラックホールのすぐ近くまで伸びていて、ジェットにならずにガスがブラックホールに落ち込んでしまうため、と考えられます。

 かつ、遠方のものほど立派なジェットがある、すなわち逆回転であり、比較的近いところにある巨大ブラックホールにはジェットが少ない、すなわち順回転が多いことも分かりました。

 遠いほど昔を見ているわけですから、巨大ブラックホールは昔は逆回転のものが多く、それが時間とともに順回転に変わっていった、という推測が成り立ちます。
 はじめはブラックホールと渦が逆回転であっても、渦のガスが何億年も落ち続けると、ブラックホールはやがて渦と同じ方向に自転するようになります。
 と同時に、ブラックホールはガスを吸収して、だんだん大きくなります。

 立派なジェットは、銀河における星形成を阻害する、という考え方があります。

  「遠方の銀河は星が少なく、中心のブラックホールも小さく、ジェットは壮大である」
  「近方の銀河は星が多く、中心のブラックホールが大きく、ジェットはあまりない」
 
ということを矛盾なく説明できるかもしれません。
 科学者たちは、巨大ブラックホールと銀河の"共進化"に熱い視線を送っています。

※原文は英語ですが、
NASAのプレスリリース
HSTのプレスリリース
をご覧ください。


ブラックホールについてはプラネタリウムで投影中です。

2010.6.4記(石坂

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