ブラックホールQ&A(2)


 2023年3月11日(土)にスペシャルナイト「ブラックホールを見た日」を開催しました。
 ブラックホール画像化に成功したイベント・ホライズン・テレスコープEHTの日本チームを率いた国立天文台・本間希樹教授に講演いただきました。 228名の参加があり、講演会終了後のサイン会には長い行列ができました。
 参加した皆様からブラックホールに関する質問をいただきましたので、簡単にお答えします。
 なお、「ブラックホールQ&A」、ミニブック「ブラックホールの秘密」もあわせてご覧ください。

Q.ブラックホールには様々な大きさのものが存在すると考えられていますが、中身の詰まり具合(密度)はサイズにかかわらず一定なのでしょうか?それともバラつきがあるのでしょうか?

A.大きくなればなるほど密度は小さくなります。ブラックホールのサイズは質量に比例するので、密度([質量]/[サイズ]3)は質量の2乗に反比例します。太陽質量のブラックホールでは原子核密度より2桁大きいですが、太陽の1億倍の質量を持つブラックホールの密度は水とほぼ同じです。


Q.ブラックホールに入ると光も脱することができず、重力には強いパワーを感じます。しかしながら、4つの力の中では重力が最弱と言われています。どうしてでしょうか。

A.力の強さは原子核内での核子(陽子や中性子)間の平均距離(2×10-15 m)で比較しています。原子核の中では、「強い力」が最も強いですが、原子核の外では核力は効かず、宇宙的サイズでは重力が支配しています。


Q.ブラックホールは自転していますか?自転していたら、どのくらいのスピードですか?

A.自転スピードはさまざまですが、最速のブラックホールはほぼ光速で自転しています。


Q.今観測されている中で一番大きいブラックホールと小さいブラックホールは何ですか?

A.2023年3月現在、観測されているブラックホールの中で、最大のものはNGC4889銀河(おとめ座銀河団)中心の210億太陽質量、最小のものははくちょう座 X-3の2.5太陽質量です。


Q.ブラックホールが物や光を吸い込むと吸い込む力が弱くなったり、または逆に吸い込む力が強くなったりようなことはあるのでしょうか?

A.ブラックホールは物を吸い込めば吸い込むほど重くなり、サイズも大きくなりますので、より吸い込む力は強くなります。一方で、一度に大量の物が落ち込むと周りの渦は非常に高温になって強烈な光を放つようになり、光の圧力によって物が落ちるのを止めてしまいます(吸い込む力が弱くなる)。ブラックホールは大食漢ですが、おちょぼ口なのです。


Q.重力が強いと時空がゆがんでいるとのことですが、なぜ物は渦巻状に吸い込まれるのでしょうか?引き込む力が強いとしたら花火の逆のようにまっすぐ集まりそうな気がするのですが・・・

A.落下する物体は角運動量(回転する勢い)を持っているからです。遠くではほとんど回っていないように見えても、中心に近づけば近づくほどスピードが上がるので、落ち込む物は渦を巻きます。ただしブラックホールの直近では回転する勢いすら「質量」に変わるので、放射状に落ちていくと考えられます。


Q.ブラックホールは高温とのことですが、もしロケットが吸い込まれてしまったら、爆発せずに溶けてしまうのでしょうか?ブラックホールの中で爆発させたらどうなるのですか?

A.ブラックホールの周りの渦は非常に高温なので、落ち込む物は溶けるというよりは蒸発してガスになります。ガスの渦の中では大小の規模の爆発が常に起きているので、ロケットが爆発したとしても影響はありません。また、“無事に”ブラックホールに入れたとして、その中で爆発したとしても、ブラックホールの外には情報が伝わりませんので、外の世界には全く影響はありません(ブラックホールが爆発することもありません)。


Q.なぜブラックホールという名称なのですか?

A.諸説ありますが、1967年、アメリカの天文学者ジョンA.ホイーラーが名付け親だと言われています。それまでは時間が停まっているところから「凍結星」と呼ばれていました。ブラックホールは「黒い穴」という意味ですが、実際の形状は穴ではなく、球であり、形から言えば「ブラックボール」です。


Q.宇宙にはどのくらいブラックホールがありますか?

A.観測から実在が確認されているブラックホールは100個程度ですが、理論的予測では、それこそ“星の数ほど”あるだろうと考えられています。



★プラネタリウム「ブラックホールを見た日」投影中(2023年5月28日まで)です!

2023年3月30日石坂