長谷川能三のHP月刊『うちゅう』街角ウォッチング  

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ TOWNSCAPE 9
 
ぶれてもぶれない電光掲示板
 六甲山の北にある神戸電鉄の谷上駅と、新幹線の新神戸駅をつなぎ、そのまま神戸市営地下鉄と相互乗り入れしている北神急行電鉄。 谷上−新神戸間のほとんどが、六甲山の下をくぐるトンネルという鉄道です。 この北神急行で谷上に向かうと、進行方向左側のトンネルの壁に、はばたく鳥の形をしたオレンジ色の照明が現われます。 まぁ現われるといっても電車は時速70kmくらいで走っていますから、後方に飛ぶように流れていきます。 また、谷上から新神戸に向かう場合には、進行方向左側の壁(上とは反対側)に、今度はリスの姿をした緑色の照明が現われます。
 この緑色のリスが次から次へと後方へ流れていった後、更に赤・黄色・黄緑色のLED(発光ダイオード)を使った電光掲示板が現われます。 写真ではわかりにくいかもしれませんが、「不思議の国のアリス」の一場面を描いた絵のようです。 でもちょっと待って下さい。 電車は時速70kmくらいで走っているのに、このアリスの絵は後方へ流れることなく見えています。 電光掲示板はちゃんと窓の外にありますし、まさか電光掲示板が時速70kmで電車を追いかけてくるわけではありません。 どうしてぶれることなく見えているのでしょうか?
 実はこの「アリスの絵」はぶれていないのではなく、ぶれて「アリスの絵」になっているのです。 トンネルの壁にあるのは、電光掲示板といっても縦横にLEDを敷きつめたものではなく、LEDが縦一列に並んでいるだけ。 電光掲示板というより電光掲示棒(?)という感じですね。 電光掲示棒は、トンネルの壁に縦向きに固定してありますから、時速70kmで走る電車からはぶれて見えます。 そのぶれて見えている一瞬の間に光るパターンを変化させていて、見ている人の目には残像でそれが1枚の絵として見えるのです。
 この電子掲示棒、他にも道路の夜間工事の警備員が振ると「とまれ」の字が浮かび上がるものや、マッチ棒ほどの棒をすばやく左右に振って空中に時刻が浮かび上がる時計などに利用されています。


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