スーパースターの孤独

青色超巨星をめぐる2つの話題

 天の川中心付近の若い青い星([ NASA, ESA, W. Clarkson (Indiana University and UCLA), and K. Sahu (STScI)])

(1)天の川中心部に、“若い青い星”が発見された

 わたしたちの天の川銀河中心部は、すでに数十億年前に新たな星を作るのを止めてしまったと考えられています。  星は大きければ大きいほど寿命が短いですから、天の川銀河中心部では、比較的小さい、歳をとった星ばかりだと思われていました。
 ところがハッブル宇宙望遠鏡HSTが詳細に観測したところ、ふしぎな若い青い星が多数発見されたのです。

 これまでも、天の川銀河中心付近に若い青い星が見つかっていましたが、手前にある星が、たまたま中心方向に重なっているだけだと解釈されていました。
 しかし、HSTの詳細な観測により、実際に、若い青い星が中心付近に存在していることが確実になりました。

 数十年前に星形成を止めてしまった天の川銀河中心部になぜ、最近生れたと思われる若い星があるのか、まだよくわかっていません。 天文学者は一つの可能性として、歳をとった古い星同士が合体して、“若返った”のではないか、と考えています。

 原文は英語ですがHSTのプレスリリースをご覧ください。


 孤独な青色超巨星VFTS682([ESO/M.-R. Cioni/VISTA Magellanic Cloud survey. Acknowledgment: Cambridge Astronomical Survey Unit])

(2)孤独なスーパースター

 ヨーロッパ南天文台ESOの超大型望遠鏡VLTが南天大マゼラン雲にあるタランチュラ星雲の中で、青色超巨星VFTS682を発見しました。
 VFTS682は、表面の温度が50000度!(太陽は6000度)、質量は太陽の150倍!、明るさは太陽のなんと300万倍!という、まさにスーパースターです。
 こういう“スーパースター”はふつう、星の集団の中で生れるものですが、VFTS682はなぜか、まわりに星が無く、孤立しています。
 考え方としては2通りあります。
 一つは、近くにある星団R136から、なんらかのメカニズムでVFTS682が飛び出してきたというもの(関連記事:「さまよえる青色巨星」)。
 もう一つは、今までの星形成理論では説明できないメカニズムがあって、スーパースターが単独で生れうる、というものです。

 いずれにしても、孤独なスーパースターVFTS682は、天文学者にとって、ナゾめいた、とても興味ぶかい星です。


 原文は英語ですがESOのプレスリリースをご覧ください。

2011.5.28記(石坂

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