暗黒物質の存在証明?

なんだ?このシグナルは・・・!

 ヨーロッパ宇宙機関ESAのX線観測衛星XMMニュートンとアメリカ航空宇宙局NASAのX線観測衛星チャンドラが73個の銀河団から、ナゾのX線を検出しました。

 銀河団はもともと非常に熱い水素ガス(プラズマ)に満たされていて、X線を放射しています。
 ところが、今回検出されたのは、これまで知られていない3.56keV(キロ電子ボルト:1keVは約1200万度のエネルギー)のシグナルでした。

 一つの可能性は、ステライルニュートリノの崩壊です。

 ステライル(不活性)ニュートリノは、その名の通り、弱い相互作用すらしない右巻きのニュートリノです。
 普通のニュートリノはスピンと呼ばれる性質が左巻きで、弱い相互作用(原子核の崩壊を起こす力)と重力の影響を受けます。
 一方、ステライルニュートリノは、重力だけに作用し、弱い相互作用を起こしません。また質量も通常のニュートリノより大きい可能性があります。 ステライルニュートリノは十分な質量があれば、有力な暗黒物質の候補となりえますが、原子核崩壊を起こしませんから、実験で直接捉えるのは、とても難しいのです。
 
 この宇宙は、目に見える星(ブラックホールも含めて)やガスなど通常の物質は5%に過ぎず、残りの95%が目に見えないモノからできています。
 一番多いのは、宇宙全体の68%を占めるダークエネルギーで、宇宙を加速膨張させています。
 そして、重力だけの作用をするナゾの暗黒物質が宇宙の27%を占めています。
 これだけ大量にあるはずなのに、その正体は全く不明です(暗黒物質は重力の作用しかしないので、直接検出することが難しいのです)。

 もしも今回検出された3.56keVのX線シグナルが、ステライルニュートリノの崩壊によるものであれば、ついに暗黒物質の尻尾をつかんだ!ということになるかもしれません。
 さらなる検証に期待しましょう!

★原文は英語ですが、ESAのプレスリリースをご覧ください。

2014.6.26記(石坂

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