宇宙マイクロ波背景放射が宇宙の暗黒時代に光を当てる

宇宙最初期の歴史が変わる!?



 宇宙のあらゆる方向から、ほぼ同じ強さでやってきている電波(マイクロ波)「宇宙マイクロ波背景放射CMB」は、人類が観測できる最も古い宇宙の姿です。

 CMBを詳しく分析することで、宇宙がどのように始まり、どのように変化してきたか、そもそも宇宙誕生が何年前のことなのか、など宇宙の歴史について、非常に重要な手がかりを得ることができます。
 特に重要な情報は、CMBに含まれる偏光(光などの電磁波の振動方向の変化)の分布です。

 偏光は主に、光が電子や物体にぶつかって反射する時に生じます。
 CMBは宇宙のいちばーん向うからやってきていますから、手前(138億年前から現在にいたるまで)に起きたさまざまな現象(生まれた天体)によって偏光します。
 
 今回、ヨーロッパ宇宙機関ESAのCMB観測衛星Planckが、4年間の観測データを集約し、全天の偏光マップを発表しました。

 この全天マップは、宇宙138億年の歴史をまるごと含んだ歴史全書のようなものです。
 今回、"ファーストスター"(宇宙最初の星)が宇宙誕生後5.5億年ころに生まれたらしい、と発表されました。
 これはこれまでの通説より1億年遅いです。
 ビッグバン(正確には、ビッグバンから38万年たった"宇宙の晴れ上がり")〜最初の銀河が観測されている131億年前までの数億年間は天体が存在しない(観測されていない)「暗黒時代」です。
 その暗黒時代に光を当てる重要な発見でした。

 "宇宙の歴史全書"の解読は、まだまだこれからです。
 Planckの偏光データを詳細に分析しても、前に報告があったインフレーションの直接証拠は見つかりませんでした。 しかし、このことは"インフレーションが無かった"と言っているのではありません。
 インフレーションがあったことは、CMBにゆらぎ(強弱)があることから明らかです。
 Planckの詳細な全天データは、インフレーションの直接証拠を探し出す上で邪魔になる天の川銀河(銀河系)内の影響を取り除く強力なツールとなるでしょう。
 いつか宇宙の歴史全書が解読されるよう、今後の観測に期待しましょう!

★原文は英語ですが、ESAのプレスリリースをご覧ください。

※宇宙の歴史についてはプラネタリウムビッグバン〜宇宙ヒストリア〜」もぜひご覧ください(投影は3月1日まで)。
 また拙著「宇宙がわかる」でも解説しています!

2015. 2.13記(石坂

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