宇宙、最初期の銀河

霧が晴れたら、銀河が見えた

 銀河は遠くなればなるほど暗くなり、観測するのが難しくなります。
 それだけではなく、宇宙論的な距離になれば、赤方偏移によって、もとは紫外線波長域の光が赤外線波長域に移ってしまったり、まわりの中性(電離していない)水素ガスによって紫外線が吸収されてしまったりして、銀河を観測するのが非常に難しいのです。

 しかし今回、ヨーロッパ南天文台ESOの超大型望遠鏡VLTは、その強力な集光力により、赤方偏移8.6という、これまでで最も遠くの銀河を観測しました。
 赤方偏移8.6は、ビッグバンから約6億年(131億年前)、距離に換算すれば約300億光年(!)です。

 この銀河UDFy-38135539は、ハッブル宇宙望遠鏡HSTが発見したものですが、これまで、距離ははっきりしていませんでした。

HSTが撮影した最遠の銀河UDFy-38135539[NASA, ESA, G. Illingworth (UCO/Lick Observatory and University of California, Santa Cruz) and the HUDF09 Team]

 今回、VLTはその集光力を生かして、銀河の赤方偏移を測ることができたのです。

 宇宙が始まって6億年しか経っていないころは、電離していない中性水素ガスが宇宙空間に充満しているので、たとえ星形成が盛んな銀河があっても、その光は私たちまで届きません。
 UDFy-38135539が観測されたのは、なんらかの理由により、まわりの中性水素ガスが電離して紫外線を通すようになったのではないか、と研究者は考えています。
 水素ガスの""が晴れた窓から、遠い遠い銀河が見えたのです。

※原文は英語ですが、ESOのプレスリリースをご覧ください。

2010.10.22記(石坂

【天文・宇宙】の話題
科学あれこれ
ホームページへ