ホシ ヲ メグル センイチ ワ
★ 水星は太陽の一番近くを巡る惑星です。88日間で太陽を一周しています。地球から見ると太陽のそばを左にいったり、右に行ったりする様子が見られます。水星の3日ごとの見え方を500倍にして示しました。背景の星座はシミュレーションの最後の日ものです。サイズと比較すると、太陽に対する行動範囲の狭さがわかります。 ![]() ということで、太陽からあまり離れないので、出入りの時刻も太陽に近く、日の入り後はすぐに沈むし、日の出前も太陽のすぐ前に昇る感じです。 この水星は、太陽の光をあびて光っていますが、光るのは太陽に向いた半面のみです。したがって、位置関係によって満ち欠けをします。ほとんどの期間は丸く見えますが、地球ー水星ー太陽 とならぶときは、地球側は光っていないので、黒い水星となります。その暗さは6等星とかまでになり、最大−2等級近くになる水星が見る影もなくなります。 さらに時々は水星が太陽のまん前を通り、太陽に黒い点を落とします。これが水星の太陽面通過です。なかなかうまく一直線にならないので、100年に12〜15回程度しかおこりません。最近では、2016年と2019年にあり、次回は2032年に見られます。 ★ オリオン座の北東にある、ふたご座は、双子の名前がついた星、カストルとポルックスがならんでいるのが印象的な星座です。ギリシャ神話に登場する兄弟がいわれですが、これほど目立てば、地域ごとに呼び名がつくことになり、日本でも「二つ星」とかかにの目玉を意味する「ガンノメ星」といったいい方があったと、日本の星名を収集した野尻抱影さんや北尾浩一さんが著書で言及しています。目立つので地方地方、場合によっては時代時代で様々な呼び方が広まったのでしょうね。 ところで、この2つの星に「ひなまつり星」という言い方があると書いている本やWEBがあります。上の野尻さんや北尾さんの本には言及されていませんし、私はこの記事を書くまで知らなかったのですが、問い合わせをうけて少し調べてみました。 WEBの著者や、本を書いた人の弟子筋にあたる人に電話で問い合わせたところ、おそらく、ですが、かつて名古屋市科学館のプラネタリウムで活躍し(1960年代〜1990年代)、「星座博物館」などの著書でもしられる、山田卓さんの創作と私(渡部義弥)は思っています。 山田さんの本「冬の星座博物館」(1983年初版)のP146、ふたご座のページの冒頭には次のように書かれています。なお、α星はカストル、β星がポルックスです。 ひなまつりの夜、なかよく並んだふたご座のα星とβ星を、内裏びなにみたてて眺めるといい。 α星がだいりさまで、β星がおひなさまだ。 もうちょい続くのですが、これは「日本の星の名前」というより、こう見立てるとわかりやすいよ。という覚え方だと思います。けして悪いことではなく、私もよくこの手の見立てをして、星の配置ややいつ頃見ればよいのかを覚えてもらうようにします。 ただ、孫引きする人はこれを「古くから日本でそう呼んできました」とかズレた知識で書いてしまいます。この手の話は、星の世界に限らず身近にもいくらでもあり、時には迷信となって人の行動を不必要に縛ることになります。 ただ、このひな祭り星という呼び方については、もしかしたら本当に「古くからあった」のかもしれません。上の本の著書の山田さんはずいぶん前に亡くなられているので、ちょっとわからないのが本当です。上の解釈は、不十分な状況証拠からのあくまで渡部のものであるとお断りしておきます。 ![]() ★ 第146話につづいて、星までの旅行時間です。木星より遠い天体には、アメリカの探査機しか到達していません。太陽から遠く、太陽光が弱いため、太陽電池による電力が使いにくくなるため、アメリカが得意とするプルトニウム原子力電池を使う必要があるためです。ただ、最新の木星探査機JUNOは、巨大な太陽電池により電力をまかなっています。なお、目標の天体にいくのに、あえて他の天体に向かい重力で進行方向とスピードを変える手法も使われます。 木星 パイオニア10号(1972年) 1年9ヶ月 パイオニア11号(1973年) 1年8ヶ月 ボイジャー1号(1977年) 1年6ヶ月 ボイジャー2号(1977年) 1年11ヶ月 ガリレオ(1989年) 6年2ヶ月(金星、地球経由、木星周回) ユリシーズ(1990年) 1年4ヶ月(その後、太陽の北に向かう) カッシーニ(1997年) 3年2ヶ月(金星2回、地球経由) ニューホライズンズ(2006年) 1年1ヶ月 ジュノー(2011年) 4年11ヶ月(地球経由) 土星 パイオニア11号(1973年) 6年5ヶ月(木星経由) ボイジャー1号(1977年) 3年2ヶ月(木星経由) ボイジャー2号(1977年) 3年(木星経由) カッシーニ(1997年) 6年11ヶ月(金星2回、地球、木星経由) 天王星 ボイジャー2号(1977年) 6年6ヶ月(木星、土星経由) 海王星 ボイジャー2号(1977年) 10年(木星、土星、天王星経由) 冥王星 ニューホライズンズ(2006年) 9年6ヶ月(木星経由) ★ 木星の月(衛星)は、1610年にイタリアのガリレオによって発見されました。ガリレオは手製の望遠鏡でこれを発見したのですが(倍率は20倍といわれています)、いまはごく簡易な望遠鏡でもそれを観察できます。なんなら、カメラの望遠レンズでもとらえられます。 一方、土星の月の発見は、その45年後です。土星の場合は、月よりも環の方が容易にとらえられ、ガリレオも環とはわからなかったものの、土星になんかあるという記録は残しています。で衛星を発見したのは、オランダのホイヘンスで、1655年のことでした。彼は望遠鏡を改良してこの偉業を達成しており、同時に土星の「なんか」を環であると確認しています。 土星の月は環と同時に「発見」されたわけです。 ★ 人類は、1957年に人工衛星を初めて成功させて以来、他の太陽系の天体へも宇宙探査機を送ってきました。それは、太陽系の全ての惑星系(地球以外に7つ)、5つの準惑星のうち2つ(冥王星系とケレス)、10以上の小惑星、複数の彗星に探査機が到達しています。そうそう、太陽と月もそうでした。 では、そこまで行くのに探査機はいかほど時間がかかったのでしょうか。探査機は、まっすぐいくわけではなく、時に、他の天体を経由して、加速をすることでロケットのパワー不足を補ったり、時間短縮をしますので、単純ではないのですが、チェックしてみましょう。 水星 マリナー10号(1973年) 1年4ヶ月 打ち上げ4ヶ月で金星の脇を通過 メッセンジャー(2004年) 4年 周回軌道投入は6年半後 金星 マリナー2号(1962年) 4ヶ月 ベネラ4号(1967年) 4ヶ月 マゼラン(1990年) 3ヶ月 ビーナス・エクスプレス(2005年) 6ヶ月 あかつき(2010年) 6ヶ月半 他多数 火星 マリナー4号(1964年) 8ヶ月 マルス2号・3号(1971年) 6ヶ月 バイキング1号・2号(1975年) 10ヶ月 マーズ・パスファインダー(1996年) 7ヶ月 のぞみ(1998年) 5年5ヶ月 他多数 ★ 月は地球から平均38万km離れています。これは地球10周分であり、日本からアメリカの東海岸ニューヨークまで1万kmを飛ぶ飛行機が12時間かかりますので、単純計算で、飛行機で450時間、19日間ほどかかることになります。 飛行機は空気のない宇宙空間は飛べませんので、人類が持っている月に行く手段はロケットになります。ロケットは地球から離れるときに秒速11kmを出せれば、地球の引力を振り切り宇宙に飛び出せます(第2宇宙速度)。これは時速になおすと4万kmになります。月までは単純計算で10時間に行き着けます。 しかし、ロケットは基本は打ち上げの時に燃料をほとんど使い、加速して地球の大気圏を突破すると、慣性だけで飛行し続けます。いつもエンジンを吹いて飛ぶSFの宇宙船のようなものではないのです。(軽量の燃料でわずかな加速をするイオンエンジンは実用化されており、宇宙探査機はやぶさなどで活用されました)。 そのため、打ち上げられたロケットは地球の引力に引っ張られて徐々に減速をしていきます。そのため、月にたどり着くには10時間ではすみません。また、月も地球も運動していますので、地球から飛び出すロケットはまっすぐ月に行くことができません。 人類ではじめて月を巡ることに成功したアメリカのアポロ8号(1968年)では、3日間弱かけて月周回軌道に到達しました。途中で複雑な軌道をとっているので、まっすぐ月に向かったわけではなく、また宇宙に出てからもロケットでの加速をしていますので、単純ではありませんが、事実として3日間弱でした。 なお、この飛行に使われたアポロ8号の地球帰還カプセルは、1970年の大阪万博で展示され、その後アメリカのシカゴ科学産業博物館に展示されています。 ところで、月に一直線に向かえるものがあります。それは、質量をもたない光です。月をライトで照らすと、その光は秒速30万kmで月に向かい、1.27秒後に月に到達します。往復では2.6秒くらいですね。月にレーザー光線を照射し、月面に反射するまでの時間を測定することで、月までの距離の測定が行われてきています。 ★ プラネタリウムは、星空以外に、解説用の線や文字も投影します。星座の名前も投影するのですが、星座がひらがな、カタカナ表記なので、意味がとれないものもあり、ちょっとした笑いのポイント(心動くのでお話のチャンス)になります。 たとえば、冬の星座には「とも」座があり、艫(船尾)の意味ですが、「智」子さんとか「知」世さんの音なので、その名前の人が「星空の中に自分の名前が!?」となったりします。 もっとおもしろいのは、とも座の近くにある、ほ座です。これは帆のことですね。名前が1文字の星座なのですが、ほか、ろ座(炉)とや座(矢)が1文字の星座です。 一方、名前が長い星座としては、みなみのさんかく座と、みなみのかんむり座の8文字が最大です。みなみのとついているため長くなるわけですが、「みなみの」がつくのは、さんかく座と、かんむり座がそれぞれあるからです。「みなみの」とついている星座はほかに、みなみのうお座があります。なお、みなみじゅうじ座は、ただのじゅうじ座がありません。そのためか「みなみ」じゅうじであり、「みなみの」じゅうじ座ではないですね。 みなみのがつかないで長い名前は、ぼうえんきょう座、いっかくじゅう座、ちょうこくしつ座の7文字です。 もちろん、英語ではこれらの名前の長さは変わります。 最後に、星座にはすべて3文字の略符があります。これは名前の長さと関係なく3文字なのですが、ほ座はVel、ろ座はFor、や座はSgeです。みなみのさんかく座は、TrA、みなみのかんむり座は、CrAです。Aは、Austraris、つまりは南のという意味です。オーストラリアと同じ語源で、オーストラリアは南の土地という意味なのですね。 最後にかんむり座はCrB となっていて、これはBorealis=北のBです。つまり学名は北の冠という意味なのですが、日本語ではただのかんむり座になっています。さんかく座についてはTri でこれはただのさんかくです。あと、みなみじゅうじ座も英語でも Southern Crossなのですが、学名はCrux、ただのじゅうじで、略符はCruです。 ★ 天体望遠鏡は天体を見るための望遠鏡です。地上用の望遠鏡とちがって、上下左右がひっくり返っていても役に立つので、正立してみせるためのプリズムなど不要なほか、望遠鏡の台座に、正確に星をとらえるための微動ネジや追尾装置などがそなわっているといった特徴があります。 では、宇宙望遠鏡は? 宇宙を観測するため、ではあるのですが、英語では SPACE TELESCOPEで、宇宙空間に設置する望遠鏡ということになります。設置といっても土台がありませんから、望遠鏡の機能を持つ人工衛星ということになりますね。 宇宙望遠鏡は大気圏外におくことで、大気により星の光が揺らめいたり、像がふくれたりといった影響を排除することができます。また、大気による太陽光の散乱の影響を受けにくいため、うまく運用すれば24時間観測をすることもできます。 また、天体からのX線や遠赤外線など大気によって吸収され観測できないものも、宇宙空間からなら大丈夫です。X線宇宙望遠鏡や赤外線宇宙望遠鏡は大きな活躍をしています。 一方で、宇宙空間のものは、原則リモートコントロールをしないといけませんし、ちょっとした故障でも修理は困難だったりできなかったりします。宇宙望遠鏡のなかには、いきなり故障をおきて全く使い物にならなかったものもあります。 宇宙望遠鏡として有名なのは、1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡です。当初は光学パーツが間違って取り付けられ、ピンボケという痛い失敗をしていますが、人間が宇宙遊泳をしてコンタクトレンズをつける修理をし、狙い通りの高性能を発揮しました。その成果の一部は、宇宙の膨張が変化する発見となり、ノーベル物理学賞を受賞しています。 ![]() こうした宇宙望遠鏡の始まりは、1978年にアメリカが打ち上げた、国際紫外線天文衛星(IUE)とされています、この望遠鏡の特徴は、フライホイール(はずみ車)を回転させることで向きを変えるしくみようになっていたことで、燃料噴射をしないために非常に長持ちをしました(20年間も運用)。後にハッブル宇宙望遠鏡も同様なしくみを持つに至ります。 IUEはあまり有名ではなかったのですが、古い天文ファンによく知られているのは赤外線宇宙望遠鏡のIRASです。こちらは1983年に打ち上げられると、天の川銀河の分子雲を調べるなどしましたが、低温で輝く小惑星や彗星を多数発見するなどアマチュア天文家のお株をうばう活躍もしたので知られるようになりました。 ★ ![]() 土星は、肉眼では点にしか見えませんが、望遠鏡を使うと環がある様子を比較的簡単に確認できます。倍率は30倍あればまず大丈夫です。ちなみに30倍程度だと、土星の環が見られることをうたっている組み立て式の望遠鏡が2023年現在、数社から売られていて、だいたい3000円ちょっとというところです(最近の物価高でだいぶ価格があがっています)。写真は、あまり手間をかけず、だいたい40倍くらいで撮影した土星です。 さて、その土星の環ですが、望遠鏡で最初に宇宙を見たといわれる科学者ガリレオ・ガリレイも見ています。1610年のことです。彼の望遠鏡はただ、まさか星の周りに環があると思わなかったのか、土星の両側に星が並んでいるようなスケッチを残しています。その後、様々な人が土星を望遠鏡で観測しましたが、環であると見抜いたのは、オランダのホイヘンスで1655年のことでした。この発見を彼は1656年に発行した冊子でアナグラム(文字を入れ替えた暗号文)で発表しています。 ホイヘンスが土星の環を認識でき、土星の衛星のタイタンも発見できたのは、彼が望遠鏡の性能を向上させたからです。ただ、現在では数千円の望遠鏡で土星の環が捉えられるようになっています。 筆者は、土星の環をいままで大勢の人に見せてきましたが、みなさん100%感動をしてくれます。ガリレオが見抜けたかった宇宙の不思議な造形は、本当に魅力的なものですね。 ★ 太陽系には、8つの惑星、5つの準惑星のほか、多数の小天体が存在します。多数というのは発見されているだけで100万個を越えており、その多くは、火星軌道と木星軌道の間にある岩石や金属でできた天体、小惑星です。 小惑星が最初に発見されたのは1801年1月1日で、イタリアの天文学者ジョゼッペ・ピアッチィによるものです。彼が王命により設立したパレルモ天文台にて他の天体と違う動きをしてる天体を発見し、最初は彗星と考えたものの、2月まで動きを追跡し、惑星と同じような運動をするが非常に小さいということを見いだしました。これが小惑星1番のケレスです。たたし2006年に準惑星というカテゴリができましたので、現在は小惑星には分類されていません。 では、2番目に発見されたのは? というと1802年3月28日にドイツのヴィルヘルム・オルバースが発見したパラスになります。彼の本業は医師で、アマチュア天文家としての活動の中での発見でした。ちなみに、1807年3月29日には4番のベスタも発見していますし、1番のケレスの再発見もしています。オルバースは、星が均等にあるなら宇宙全体が明るいはずという「オルバースのパラドックス」でも知られています。 さて、では小惑星の発見1号はどっちなのでしょうか? 私としては発見はケレスの1801年でよいとは思うのですが、実は2番のパラスも準惑星と分類すべきという意見もでていて、なおややこしいですね。ちなみに、3番の発見は1804年9月1日のジュノーで、ドイツのハーディングによるものです。 ★ 天文学者がどんな人なのか、それは一言ではいえないのですが、私のつきあっている中では人間の能力を限界まで出さないといけない研究を仕事にしているので、世間一般とはちょっと違う人が多いですね。本当に仙人のような人もいますし、恰好にまるでかまわない人もいますが、きちっとしてものごしもやわらかい、その辺のビジネスパーソンという感じの人もいます。全般に世間ずれしてないというのは同じです。 さて、テレビドラマでは、様々な人物が描かれます。基本、どんな人物でも、ドラマにするために、大げさに描かれ、天文学者も例外ではありません。ただでさえ「世間とちょっと違う」ものが大げさになるので「そうとうな変人」として描かれますね。 2000年代に放送されたアメリカのテレビドラマ Numbers は、数学が事件を解決するというものです。そこでは、主人公の数学者チャーリー・エプスの大学の同僚でラリーという天文学者が登場します。彼はチャーリーと同じく10代で大学を卒業した超天才で宇宙論の理論でいくつもの業績を持つ教授ですが、人づきあいが苦手で、相手の気持ちを過度に受け止めてしまうところがあります(逆にスルーも)。白いものしか食べず、家をもたず、研究室で寝起きしていたのですが追い出され、野宿をしていました。その後、宇宙飛行士に選抜され、帰ってきてからは仙人のようになってしまうというものでした。 天文学者の中には、日本でも年中(冬でも)アロハを来ているような人もいますし、天文学者に限らず、なかば研究室で寝起きしているような研究者もいますけれど(学者ではないですが、学生の時は私もそうでしたし)、さすがにここまではと思います。 ★ 星(ここでは恒星)が輝くのは、その表面が高温だからです。そしてその光は様々な波長がまざったものですが、そのまじりかたは、温度に応じていて、だいたい「黒体放射」のルールに従います。このルールは、1900年にドイツの物理学者マックス・プランクによって理論的に定式化されたのでプランク放射とも言われます。図ではこんな感じですね。 ![]() Tは温度(K:ケルビン温度:絶対温度ですが、まあ摂氏温度℃と 273.15度差なので、何千度になるとそう変わらない)。実線が、それにともなう色の強さの分布。人間の目にわかる可視光線の部分は、虹色が描かれています。つまり、人間の目に見えない赤外線や紫外線にも星は光を放射していて、3000Kのような比較的低温の星だと、赤外線ばっかり出しているって感じなんですね。 ★ 人がモノの色を感じるには、ある程度の明るさが必要です。暗いところではあらゆるものが白黒に見えるのは、人間の目がそのようにできているからです。色を感じる目の組織の感度が低いのですね。 一方、星にはそれぞれ固有の色があります。ただ、星の光はかすかなので、上の目の特性とあいまって、特に明るい星だけが、色の違いを感じさせてくれるのです。まあ、経験上、1等星以上ですね。 ただし、双眼鏡や望遠鏡などで星の光を集めて見れば、より暗い星でも色を楽しむことができるようになります。望遠鏡の楽しさは拡大するだけでなく、そんなところにもあるのです。 さらに、人間の目より高感度なセンサーや、光の信号を蓄積できる感光フィルムを使って写真や動画を撮影すえば、これまたカラフルな宇宙を楽しむことができます。 ★ 太陽系の天体は、太陽を一つの焦点とする楕円軌道を公転しています。これは17世紀のはじめにドイツのケプラーさんが、師匠のデンマークのティコの長年の観測結果を整理して発見しました。 ![]() 軌道の中で太陽に近い場所と遠い場所があり、それぞれ「近日点(きんじつてん)」「遠日点(えんじつてん)」と読んでいます。英語だと perihelion aphelion と言います。heli は、太陽の神様ヘリオスから来ている言葉です。 楕円軌道がつぶれているほど、遠日点と近日点の差が激しくなりますが、それを表すものとして、離心率 e が使われます。 e はエキセントリックの e で「外れ具合」とでも訳すとちょうどいいかなと思います。英語の学術用語は、日常用語から来ているものが多いですが、理解しやすくてうらやましいですね。この eは、楕円の中心から、太陽がある焦点までの距離までの割合を0〜1で表したもので、e=0だと真円、1だと楕円にならず放物線になります。 ちなみに、近日点〜焦点までの距離(近日点距離)は、軌道長半径aが1とすると 1-e、遠日点距離は 1+e となります。 理科年表には、近日点距離は載っていなくて、平均距離(これは aになります)と e しかのっていません。それでわかるでしょ? という人向けのデータブックということがわかります。 ということで、1-e と 1+e で太陽系の主要な天体の近日点距離と遠日点距離の違いを計算してみました。 ![]() ★ 天体写真が初めて撮影されたのは、ジョン・ハーシェルによる1839年の写真とされています。ジョン・ハーシェルは天王星を発見し大望遠鏡の制作者だったウィリアム・ハーシェルの息子ですが、天文学、博物学、写真に関するそれぞれ画期的な貢献をした大物科学者でした。膨大な南天も含む天体観測で天体カタログを編纂し、星の明るさの等級が5等かわると100倍違うというのは、彼が見いだし、現在の等級の定義のベースになっています。ベテルギウスが変光星だと発見しています。写真に関しては「写真」「ネガ」「ポジ」という言葉を作ったのは彼であり、初期の写真の様々な化学処理の仕方を提案しています。ちなみに青写真は彼の発明です。また、プログラム可能な計算機を開発したバベッジの友人であり、彼のほか様々な研究者を世に出す仕事もしています。 父ウィリアムがあまりにも有名すぎて、ふつうなら十分すぎる実績を残している人ですが、その割には名前が知られていません。 ★ 1年、1月、1日。カレンダー=暦は区切りでできています。そして、その基準はもともと多くの人が同時にわかる。天体の動きを基準にしています。1年は、太陽の南中高度が一巡する(地球が太陽を一周する)。1日は、太陽が南中してから次に南中するまでです。 では、1月は? かんがえてみればこれだけは28日だったり、31日だったりバラバラですね。元々は、新月から次の新月までで、一日は、朔日、つまり新月の日という意味があります。 でも、たとえば今日はほぼ新月ではなく、半月です。はい、もともとは月を基準に1月という区切りをつくったものの、人間があれこれいじったためにずれてしまったのですね。 これは、生活において、季節の循環の1年や、昼夜の1日にくらべ、いつが満月であるかはあまり重要ではなくなったからだと思われます。潮の満ち引きにはかかわりますから、漁師さんには重要なのですが、多くの人にはそうではないということですね。 ★ 本日、天体写真家の藤井旭さんの訃報が飛び込んできました。28日に亡くなったとのことでした。81歳でした。藤井氏は、山口県出身。20代から天体写真家・イラストレーター、そして天文の入門書の作家として活動をし、イラストと写真がたっぷり入り、軽妙な筆致で親しみやすい本で、多くの少年少女の天体観察の面白さを紹介し、天文趣味へと誘いました。特にあかね書房の「科学のアルバム」シリーズでは、カラフルな写真が目を引き、私も愛読していました。この著作活動は晩年近くまで半世紀におよびました。そのため、現時点で天文ファンのほとんどが、藤井旭の名前を知り、その著作に親しんできています。 また、藤井氏は1970年代に那須高原に国立科学博物館の村山氏や天文ファンが協同で作った星の別荘「白河天体観測所」を開設し、その活動を著作や天文雑誌などで紹介しました(2014年閉鎖)。所長には愛犬のチロをあて、そのエッセイが読書感想文の課題図書になるなどもあり、天文好き以外にも知られていました。また、チロが呼びかけ人(犬?)となって行われた「星空の招待」という星祭りも福島県の浄土平で開催され、多くの天文ファンの交流の場となっていました。 また、天体写真への取り組みでは、海外でも知られていました。 その活動で、非常に広く知られた藤井旭氏は、英国のアマチュア天文家パトリック・ムーアやフランスの19世紀末に活躍したフラマリオン、1930〜50年代に活躍した日本の野尻抱影のような、世代をつなぎ、天文の世界を大きく広げる存在でした。 2019年には日本天文学会の天文教育普及表彰もされています。その文章が活動とインパクトをよく表していますので、リンクを貼っておきます。 私は上の星空への招待ほか職場への取材などでなんどか藤井氏にお会いしています。憧れの存在で、どこかに一緒に写った写真もあるはずですがでてきません。 ★ 21世紀は、あらゆる場所にコンピュータがあり、だれもが日常的に使う世の中になっています。しかし、100年前の20世紀初頭には、現在のようなデジタルコンピュータはなく、またプログラミングという概念が英国のチャールズ・バベッジが考案した機械式のコンピュータとそれを理解したラブロス・エイダによって誕生したというところでした。 そんななか第二次世界大戦の暗号解読のための英国のボンベや、弾道計算のための英国のENIAC、また純粋にコンピュータを考えたABCなどが黎明期のコンピュータです。 そして、コンピュータが世の中に知られるようになると、IBMが量産をはじめ、日本などでもコンピュータの製造がはじまります。複雑な金融計算に主戦場があるなか、科学者もすぐにコンピュータの有用性に目を向けます。 たとえば、恒星の一生は、核反応の確率と熱輸送で計算できるのですが、その複雑な計算はコンピュータによりなされています。また、一意に解がない多体問題などではコンピュータによるシミュレーションがものをいいます。有名なのはToomre兄弟による銀河通しの衝突のシミュレーションで、銀河の衝突で銀河の腕構造ができるようすなどが示されました。なお、多体問題を解くために、専用のスーパーコンピュータが東京大学で開発され(GRAPE)、その性能が世界一になったこともあります。 最近では多数の電波望遠鏡の観測をつきあわせたものを画像化するのに、強力なスーパーコンピューターが使われたりもしています。また、データベースの活用など様々なジャンルで天文学はコンピュータ活用の先鞭をつけてきました。 ★ 三角形のガラスのブロック。プリズム。プリズムに光を通すと、その光は虹色に見えます。光の中の様々な色の成分が現れているからです。英国の科学者アイザック・ニュートンはプリズムで分けた光をまたプリズムでで元にもどすといった実験を通じて、光の正体に迫りました。 また、別に三角でなくともガラスでなくとも、プリズムと同じ効果は現れます。大気に浮かぶ無数の球形の水滴は、太陽の光をその中に通して反射するさいに、見事な虹を作ることがあります。太陽を背にして霧吹きをふくだけでも、この現象は見られますね。 そして、これは地球の大気でも起こります。低空の空気に斜めに照射させて星の光は虹色に分かれて見えます。プリズム効果なんていうこともあります。低空の星は大気で光を吸収されて暗くなるので見えにくいのですが、望遠鏡などで光を集めることで、この星の虹を体験することができます。 ★ 星のなかでも特に明るい1等星は、惑星が5つ、恒星が21(または22※)です。 このうち恒星のリストは、天文データベースSIMBADから引くと次の通りです(翻訳は私流です)。
さて、上の1等星のうち、光度階級で分類すると、 7つが主系列星(矮星)、 4つが準矮星、 4つが巨星、 2つが輝巨星、 3つが超巨星です。 光度階級というのは、簡単に言えば星の大きさです。同じスペクトル型の色であっても、恒星の大きさは違います。ただ、無秩序に違うのではなく、ほとんどの恒星は主系列星(矮星)という、色と大きさが対数スケールだと一直線になるようなところにあり、そこからはずれて大きいのが準矮星、さらにずっと大きいのが巨星、もっと大きいのが輝巨星、とてつもなく大きいのが超巨星となります。超巨星になると、主系列星(矮星)である太陽の数百倍の大きさになるものもあります。大きければ当然、明るいわけです。 ありていにいえば、1等星が明るいのは14個については、標準的な主系列星(矮星)よりも巨大なスーパースターだからなのです。これらは、人間世界のスーパースターと同じく、宇宙ではレアな星たちです。 では、残りの7つの主系列星(矮星)はどうでしょう。色では、O,B,A,F,G,K,Mというタイプに分かれます。この色は温度で決まります。温度が高い順に並べており、高温がO、低いのがMとなっています。太陽は中間のG型です。そして、1等星は、太陽より高温の星というのは、それだけ大きなエネルギーを出しているということです。 はたせるかな7つの主系列星の1等星は 2つがB型 4つがA型 1つがG型+K型の連星です。 7つのうち6つが、G型の太陽よりもエネルギーをバシバシ出している、エリートな星です。 そして、最後の1つはアルファケンタウリのA星は、G型でも太陽の5よりも明るい2で、太陽よりちょいすごい星です。連星のBはK型でようやく太陽よりチョイエネルギー小さめの星になりますが、2つあわせれば当然太陽よりもすごい星になりますな。 ということで、1等星はすべて、太陽よりすごい星ばかりなのです。 ※実はSIMBADのCriteria Queryで、Vmag<1.5 (1等級以上の天体)とすると、リストで26でてくるのです.。 一つは恒星でない銀河の大マゼラン雲、一つはなぜかおおいぬ座の矮小銀河、もう一つはさらになぞな超新星SN2009jb(そんなに明るくなった記録はないので、たぶんデータベースの誤記載)、あとは恒星ですが2つはケンタウルス座のαが連星であり、それぞれがピックアップされます。まとめてもあるので5つ多くでていますね。ということで26−5で21。またケンタウルス座のαAとαBを2個と数えると22です。 ★ 星は宇宙に散らばる物質が、重力や周囲の圧力によって集まって作られます。では、宇宙に散らばる物質とは何なのか? ですが、そのほとんどは、水素ガスであり、次に多いのがヘリウムガスです。これに、炭素や酸素、あるいは金などが少量ずつ加わって星が作られるわけです。 ところが、私たちの地球では、水素は水(水素+酸素)として多く見られますが、むしろ身近な石などはケイ素と酸素ですし、生き物の身体で重要なのは炭素です。ヘリウムはほとんど見られません。実際、ヘリウムは最初地球ではなく太陽で発見され、そのために太陽(ローマ神話の神ではヘリオス)の元素ということでヘリウムという名前がついたほどです。 これは、水素やヘリウムなどは非常に軽いために単独のガスとしてはその辺に存在できず、ヘリウムなどは極めて化合物になりにくい物質であるため、それらが化合したり抜けたりした残滓が地球で目立った存在であるためです。そのため、地球は太陽などに比べあまり大きな天体ではありません。 一方、木星や土星は巨大なため、この軽いガスを引き留めるだけの重力を持っていて(太陽からの距離が遠く寒いためガスの運動が小さいこともあり)体積が地球の1000倍という巨大な天体になっています。なお、太陽はさらに大きく体積は地球の100万倍を越えます。 宇宙では、大きな星は、宇宙のメインである水素やヘリウム、地球のような小さな星は酸素、炭素、ケイ素、さらに金属などの宇宙ではマイナーな物質でできているのです。そして、自ら輝くことができる恒星は大きくないといけないので、恒星は水素とヘリウムを主成分とする星となっています。 ★ 2022年現在、日本では星に関する(天文趣味の)商業出版の雑誌が2つ発行されています。一つは誠文堂新光社から発売されている月刊天文ガイド、もうひとつがKADOKAWAから発売されている月刊星ナビ(編集はアストロアーツ)です。昨今は本が売れなくなっているので、月刊誌が2誌維持されているというのはなかなかすごいことです。海外では AASのSKY&TELESCOPEとKalmbackMediaのASTRONOMY誌くらい(中国や英国にも天文雑誌はありますけど)ですから、日本で2誌というのはたいしたものです。それだけ天文ファンが多いということですね。若い人から高齢者まで幅広い人が天文趣味をしているためでもあります。 ちなみに、月刊天文ガイドは1965年に創刊されています。この出版社は1949年からデータブックの天文年鑑を発行しており、さらに1924年から「子供の科学」という今も継続している子供向けの科学雑誌を発行しています。 一方、月刊星ナビは、もともとSKY WATCHERという学研の子会社の立風書房(2004年に解散)が出していた雑誌が前身です。1983年に創刊され、2000年に休刊されました。同じ年に編集のアストロアーツが版元を変え、タイトルも変えて出発したのが月刊星ナビになります。このほか、1980年代にはほかに、季刊星の手帖(河出書房新社→星の手帖社:1978年→1993年休刊)、月刊天文(地人書館:1984年→2006年)が入手できました。天文クラブなどでは4誌をみんなでそれぞれが購入し、交換し合って読んだりしたものです。 ★ ![]() ベツレヘムは、新約聖書でイエス・キリストが誕生した村の名前です。聖書では、2000年前の紀元1年ごろに、ひときわ明るい星がベツレヘム上空に見え、救世主(キリスト)の誕生を知らせ、それを見て、東方から「3博士(星占い師と考えられる)」が赤ん坊のキリストの祝いに訪ねてきたとされています。キリスト教会の生誕劇で有名なシーンです。 さて、このベツレヘムの星はなんだったのか? というテーマが古いから時々話題になってきました。 17世紀初頭に活躍し「惑星の運動についてのケプラーの3法則」や望遠鏡の考案でも名高い科学者ヨハネス・ケプラーは(彼は星占い師でもあった)、2000年前の惑星の位置を調べ、木星と土星の3重会合(2つの星が接近して見えること)ではないかという説を提唱しています。実際にシミュレーションソフトで調べてみると、紀元前6〜7年ごろとちょっとズレるのですが、同じく聖書に書かれている「人口調査」などの事項の記録と突き合わせると、まあありえるのではないかとういことになっています。 ![]() 聖書はシンボリックに書いただけという話もあり(実際4つの福音書のうち1つにしか書かれていない)。それもそうかもねというところです。 この話題は特に欧米では、プラネタリウムのクリスマスネタとして定番だったのですが、昨今は、欧米、特にアメリカでは一つの宗教をえこひいきするものであるからよくないという考えもあるそうです。またクリスマスツリーも公共施設(市役所など)では展示しないとなっています(ホリディ・ツリーとかいう名称を使ったりしています)。一方、商業施設などでは変わらず呼び物として使われているようです。 ★ 1等星、2等星…というように、星の明るさは伝統的に「等級(Magnitude)」で表します。これをはじめたのは、2000年あまり前の古代ギリシアの科学者ヒッパルコス(Hipparchus BC.190〜120ころ)です。ヒッパルコスは、最も明るい星たちを1等星、逆に見えるかどうかという星たちを6等星とした6段階の明るさ評価をしました。ヒッパルコスの星表にそれを記載したとされています。 さて、されています。と書いたのは理由があります。このヒッパルコスの星表は、現物が実在しないのです。AD.147年に書かれたプトレマイオスの「アルマゲスト」にヒッパルコスの星表についての言及があり、それにより評価がされていたわけです。 ※最近、ヒッパルコスの星表の複写が聖書に使われた再生羊皮紙に痕跡が残り、読み取られたというニュースがありました。 いずれ2000年ほど前から星の明るさを示す等級は使われてきたということはまちがいありません。 その後、星の明るさをより科学的に評価する必要がでてきて、イギリスのジョン・ハーシェル(天王星を発見したウィリアム・ハーシェルの息子でやはり大天文学者)は1等と6等は平均すると100倍の明るさの違いになることを示しました。 さらに19世紀の天文学者イギリスの(後にイギリスの植民地だったインドに派遣されてそこでも活躍)ノーマン・ポグソン(1829〜1891年)は、これを発展させた「ポグソンの式」を提唱しました。これにより、より細かな星の明るさの表現や、非常に明るい、あるいは暗い天体の明るさも正確に表現できるようになりました。式は 等級の差=- (5/2)log (明るさの比) というもので、右辺にマイナスがつくのは、明るい天体ほど等級では数字が小さい(「2」等星のほうが「1」等星より暗い)ため、ひっくり返す必要があるからです。 現在も、この式を使って天体の明るさの違いを評価します。 ★ 2022年12月18日 第126話 遠くの天体を観る(銀河編) |
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