ホシ ヲ メグル センイチ ワ

星を巡る1001話

星や天文にまつわる短いお話を1001話書こうと思います。スタートは2005年2月25日。ボチボチやっていきます。


公序良俗に反さないかぎり、配布・コピーは自由とします。出展を、小さくてもけっこうなので、明記してください。WEBに転載される場合は大阪市立科学館の渡部ページにリンクをお願いします。

大阪市立科学館 学芸員 渡部義弥


2023年5月6日 第151話  星までの距離を測る・年周視差

星は日常感覚からすると、無限といっていいほど遠くにありますが、本当に無限であれば見えなくなるので、有限の距離があります。では、その星までの距離を測るにはどうすればいいのでしょうか?

これにはいろいろな方法がありますが、一番直接的なのは、人間が両目で距離を推定するのと同じ「視差」を使う方法です。すなわち、2カ所から星を見て、2カ所の間の距離と見える方向の違いから距離を測定する方法です。星の距離はうんと遠いので、2カ所には、人類が達成できる最も遠距離である、地球が太陽の向こうとコッチになる。夏と冬、秋と春などの場所が使われました。2カ所間の距離は3億kmです。この地球の半年あいての角度の差を特に「年周視差」といいます。

恒星の中で一番近いのがプロキシマという星ですが(プロキシマは最も近いという意味)プロキシマ(Proxima)の年周視差は、SIMBAD http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/ という天文データベースで調べると、 768.0665ミリ秒角とあります。 5000分の1度であり、ラジアン単位だとざっと30万分の1ラジアンです。実は年周視差は2点間の距離の半分に換算することになっている(太陽〜地球間の距離)ます。

小さい角度の場合、
ラジアンであらわした角度×対象までの距離=測定2点間の距離ですので
対象までの距離は=測定2点間の距離/ラジアンであらわした角度になります。
つまりプロキシマまでの距離は 1.5億÷1/30万 〜45兆kmとなります。厳密に計算すると40兆kmであり、1光年は9.46kmなので、4.2光年あまりがプロキシマまでの距離となります。

なお、プロキシマはケンタウルス座という南天の星座の星で、大阪からは見えません。北緯28度以南ならばわかりますが、奄美大島より南で見られます。ただし、明るさは11等と、肉眼はもとより見えず、小型望遠鏡でもとらえるのが困難な明るさです。
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