ホシ ヲ メグル センイチ ワ
★ スペクトル。何か名前を聞いたことがあるけど、いまいちよくわからない。天文用語(※)の代表格です。 スペクトル型は、天文分野の場合、スペクトルメーター:分光器(計)を使って調べます。分光? 天体の光をプリズムなどを使って虹色に分けて調べることです。虹は雨粒が作る天然の分光器ということになります。分光器でわけられた虹のパターンをスペクトルといいます。 スペクトルという言葉そのものは、像という意味のフランス語(英語ではスペクトラム)です。あるもの(例えば光)の特徴を現すものくらいの意味ですかね(自信なし)。 さて、分光器で恒星の光をわけるとどうなるかというと、下の図のようになります。セッキという19世紀の天体観測の達人によるものですが。多数の暗い線(暗線:光が弱い部分)があり、そのパターンが恒星によって違うことがわかります。 恒星は熱く発光するガスの塊です。熱くて光るものは、あらゆる色の光を出す(黒体放射)ので、光をわけると単純には連続的に色が現れるはずです。が、暗線がある。その部分の色の光が吸われてしまっているのですね。 この光が吸われている吸収スペクトルの原因は、発光している恒星と、私たちの間にある物質です。物質がナトリウム原子のガスならなら黄色っぽいところを、水素ガスならば緑と赤っぽいところをピンポイントに吸収します。吸収は、水素などの原子の周りをまわる電子がするのですが、まわるポジションが決まっているため、そのエネルギーに相当するところがピンポイントに吸収され、暗線:吸収スペクトルとして現れるわけです。 逆にいえば、スペクトルを調べれば、恒星の大気(全部ガスだけど発光しているところより上空の部分)の状態がわかるというわけです。かんたんには大気にどんな物質があるかがわかります。さらに、恒星によってパターン(スペクトル型)が違うことが下の図でもうかがえます。 1868年には、太陽のスペクトルを調べることで、未知の物質が発見されました。これは太陽(ヘリオス)の元素ということでヘリウムという名前が付けられましたが、後に地球上にもあることがわかっています。 スペクトルは非常に色々なことがわかる。天体観測の強力な手段なのです。 ![]() ※物理、化学、工学など理系では非常に広く使われます。経済でも使われるようです。 ★ 等級については、写真の登場ととほぼ同時代のイギリスの天文学者ノーマン・ポグソンが、これを精密に定義して、1.0等級は6.0等級の100倍明るいとしました。11.0等級は6.0等級の100倍暗くなります。先ほどの話だとレンズの直径7cmの望遠鏡を使うと、人間は11等級の星まで見られるということになります。 また、写真はもともと人間の目より、青っぽい光に敏感で、赤っぽい光に鈍感な性質を持っていました(今は、様々な開発によりそうではなくなっています)。 そのため、青い星を人間が見るより明るく、赤い星は逆に暗く写してしまいます。 赤い1等星は、写真で見ると青い2等星より暗く写ってしまうことがあったのです。 そうなると、どういう特徴をもったセンサー(人間の目も、写真もセンサーといえます)を使うかによって、等級は変わることになります。 初期には「実視等級」「写真等級」という言い方がされましたが。 その後、センサーとフィルターを組み合わせた「システム」ごとにV等級やR等級といった定義が生まれるようになります。 これは、目で見えない赤外線まで拡張されています。いうまでもなく、赤外線センサーの登場という技術革新とセットになっています。 なお、これが電波やX線などだと、あまりに人間の感じ方と違うのと、データの取り方が違うために、明るさの尺度である等級ではなく、エネルギーの強さを単位が普通になりました。 電波だとジャンスキー(Jy)とか、X線だとeV(エレクトロンボルト)といった単位が使われています。なお、これらは、エネルギーが大きいほど数値が大きいほどいう、ごく自然な尺度となっています。 その点は、マイナスのほうが明るいという等級とはちがいます。 他の分野から天文学の関係の研究に分野をひろげるひとたちは、 この天文学の“非常識”に、最初、ハァ!? となるのはお約束です。 1等星、という言葉は、古代から大きく変化、拡張して現代に至り、天文学者の測定の指標として受け継がれて現在に至っています。 ★ 星の明るさを6段階、1等星、2等星とに現す方法は、長らく使われ、いまでも通用します。 ただ、その後、革新的な進歩があり、この1等星という表現は変化します。 まず、17世紀の望遠鏡の発明です。 これにより、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイは 6等星より暗い星をたくさん発見しました。 つまり、7等星、8等星・・・があるということになります。 実際、望遠鏡や双眼鏡を使うと、星のかすかな光を集められるため、 より暗い星がみられるのです。 光を集める力(集光力)は、レンズの大きさにより変化します。 人間の瞳は最大で直径7㎜のレンズです。 これが10倍の直径7cmのレンズを持つ望遠鏡だと、 集光力は、面積が100倍なので100倍になります。 星の明るさの分布が均等ならば、100倍多くの星が見られることになります。 また、19世紀に写真が発明されると、 精密に星の明るさが比較、測定できるようになりました。 遠く離れて比べにくい星同士の明るさの違いも精密に測定できます。 そういう状況ですと、1等星、2等星という区分けでは不十分で 1.2とか3.7とか、さらには0.7とか-1.5といった数値も使うようになり、一等賞二等賞みたいな言い方はおかしいので、 「等級」という表現を使うようになります。 等級は、英語ではマグニチュード(magnitude)。地震の規模を現すマグニチュードと全く同じ言葉です。Mag とかMと省略されることもよくあります。 ★ 星の明るさは、等級で現します。 明るい星は1等星。 暗くなるについて、2等星、3等星・・・と数字が大きくなります。 最も明るい20個ほどの星が、1等星で、 目で見えるギリギリの明るさの星が、6等星です。 この6段階の区分けは、 2000年以上前に、古代ギリシアの天文学者 ヒッパルコス(紀元前190年ごろ - 紀元前120年)が作ったと考えられています。 「考えられている」というのは、記録が残っていないからで、その後の別の人の本に 「ヒッパルコスによると」というのが頻出するため、そう考えられているのです。 いずれにせよ、長い歴史があることは間違いありません。 ★ 地球と太陽の間の距離はおよそ1.5億km、正確には1億4959万7870.7kmです。太陽の直径が140万km、地球が太陽を楕円軌道で回っているので年間で300万kmくらい変動がありますから、これは平均値です。 一方で、光のスピードすなわち光速は秒速およそ30万km。これは定義された定数で厳密には2.99792458×10^8m・s-1 (国立天文台編「理科年表2024」天1)であり、1983年以降は光速から1mが求められるようになっています。 この30万kmは、地球の円周4万kmの7.5倍にあたるので、光はよく「1秒間に地球を七回り半まわる」と表現されます。ものすごい速さですが、それでも0.1秒なら地球1周できず、地球の裏側のブラジルと電話すると、わずかな遅延を感じることになります(実際は、光ファイバーの経路などの問題でさらに遅れる)。 さらに、平均38万km彼方の月だと、1秒以上ですから、月面探査をする宇宙船とのやりとりは「あ、そこ危ないからよけろ」とかいっても、間に合わないことがおこります。月よりさらにはなれた小惑星探査や火星探査などでは、人間の指示では間に合わないのは明白なので、着陸などの寸刻をあらそうミッションでは、自律的に宇宙船が機能しなければいけません。 さて、前置きが長くなりましたが、では、そうした天体までに光、まあ電波も同じ電磁波なので、通信が届くのにどれくらいかかるでしょうか。星座の星なら何光年みたいなズバリな言い方がありますが、それをあまり聞かない太陽系の一覧にしてみました。もとより軌道の関係で、天体が地球に近いときと遠いがありますので、平均ではということになります。(内惑星である水星と金星の平均距離は太陽と同じになります)
★ インターネットといいますか、いわゆるホームページ(WEB)は、スイスにある国際的な素粒子実験施設CERNで誕生しました。場内の様々な情報の共有のために、同所の上級技術者であったティム・バーナーズ・リーが1990年12月にNeXTというUNIXというOS(Windowsのようなもの)で作動するワークステーション(大型コンピュータ並の能力を持つデスクにのるコンピュータ。いまはほぼPCに統合された死語)に実装したものです。 このWEBの技術は1993年に開放され、当時発展しつつあったインターネット網に接続されていた官民の研究機関を中心に広がっていき、様々な情報が「インターネットのWEB」で入手できるようになり、いまや、世界の情報の基盤となっています さて、このWEBは研究機関からはじまったこともあり、NASAなど宇宙研究に関係する機関も、当初から天文台や宇宙探査機が撮影した写真や動画の公開をはじめました。NASAについてはもともと、各機関のほかに、アメリカの各州に写真や映像を特に教育向けに提供する事務所を構え、公開専属の職員をかまえていたこともあり、これらの機能がWEBへも反映されていきました。また、権利関係についても非営利・教育目的に使いやすいように整備されています(※)。 なお、この権利関係については時々見直されることがあり、適宜チェックが必要です。基本的には、使いやすくなるようへの改訂です。(NASAのロゴマークの使用だけはずっと厳格です。) NASAのホームページは研究や開発のブランチごとに多数ありますが、基本は https://www.nasa.gov/ です。画像は、https://images.nasa.gov/ の検索ページが便利だと思います。 ※2023年8月11日現在の権利について https://www.nasa.gov/multimedia/guidelines/index.html 1)非営利目的の静止画、音声録音、ビデオ、および関連するコンピューターファイル NASA製作のものは、断りなしに使えます(個人のWEBもふくむ)。出所はNASAだということは消えません。第三者の製作物をNASAのサイトでお断りしたうえで使用していることがあるが、これはその製作者に個別に問い合わせてください。 2)商業目的で使用されるNASAのコンテンツ 広告などについて、それぞれガイドラインが示されています。NASAのアポロ計画には「オメガの時計」が使われました。といったことは、事実をきちんとなぞりなさいというルールになっています。おもしろいのは「NASAは、アルコールやタバコ製品に関連するプロモーションには協力しないという長年の方針を持っています」ということですね。その他は、https://www.nasa.gov/multimedia/guidelines/index.html からガイドラインをたどって確認してください。 ★ 社会科の地理の学習には「地図帳」が定番です。日本では、帝国書院のものがよく知られていますね。様々な地図が一冊になっており、地域の特徴などが記事になっていることもあり、何かで話題になった地域について調べるには便利です。もっとも最近はネット地図が非常に便利になったので、出番は減っていますね。 一方で、理科の天文の学習には、「星図帳」があればいいなということになります。単に星図があるだけでなく、解説などもあると見ている星についていろいろなことがわかってきます。広島文理大学の村上忠敬さんは、戦前の1934年に「全天星図」を作成しましたが、まさにそういう考えの図でした。俗に村上星図と呼ばれるこの星図帳は判をかさね、昭和中期ではよく知られた星図でした。星空の案内役として、多くの天文ファンを導いたそうです。 ただ、そこから進んで、彗星の捜査をしようとか、変光星の観測をしようとかなると、掲載された星の数など使いにくく、別の星図にみなシフトしていくことになります。 ★ ストラスブールは、フランスの北東部のアルザス地方、ドイツとの国境のライン川沿いにある古い都市です。ライン川を使った交易の要衝として栄えました。また、なんどもドイツ領になったりフランス領になったりという係争の地でもありました。 このストラスブールの旧市街は2017年にユネスコの世界遺産になっており、その構成物の一つとして、ストラスブール大聖堂(ノートルダム大聖堂)の天文時計があります。時刻だけでなく、月齢など天文の運行も知らせる機能をもった時計で、この手の時計としては世界最大のものとされています。他にも壁面日時計もいくつかあります。 さて、そのストラスブールは、現在も世界の天文学者にとって、重要な地位を占めています。その源泉は、ストラスブール大学に付属したストラスブール天文台であり、しばしば所属する科学者が重要な研究発表をしていますが、なによりも知られているのは、同天文台が運営する天文データセンターのデータベースSIMBADです。インターネットから使うことができます。 これは当初、世界中の天文学者が作った、様々な恒星のカタログを横断的に検索できるものとして作られており、たとえば織姫星(Vega)について検索をすると、 ![]() 次のようにVegaについての様々な情報が一気にしめされます。リンク先には元の論文やデータカタログが紐付けられており、星図などを表示するシステムと連携しています。とても便利です。全部英語ですが。読む方は自動翻訳でなんとかなりますが、問いかける方は、天文学と英語の知識が必要になります。 ![]() このSIMBADは無料で誰でも使えるもので、この天文データをベースにして研究することも可能です。実際に望遠鏡を使わなくても、観測データが好きにとれるので、バーチャル天文台といったりします。大学などに所属しなくとも、天文学の蓄積が活用できるすぐれものです。 ★ 人工衛星に望遠鏡を搭載する宇宙望遠鏡。当初は大気が邪魔で観測ができない、X線や紫外線、赤外線を観測するために宇宙空間に設置しました。地上から観測できる可視光や電波はわざわざ運用が面倒な宇宙に設置する必要がなかったからですね。 ところが、国際紫外線天文衛星(IUE:1978年打ち上げ)が大成功し、また1983年には赤外線天文衛星(IRAS)も画期的な仕事をし、撮像管だったものがCCDのような半導体二次元撮像素子になりと環境が整い、可視光や近赤外の宇宙望遠鏡を打ち上げるということになっていったのです。 そして打ち上がったのが1990年のハッブル宇宙望遠鏡です。それまでは機能をそのまま名前にしたようなものですが、人名がつきました。ハッブルはアンドロメダ銀河が天の川銀河の外にある天体であることを発見し、宇宙が膨張していることを示唆する研究をしたアメリカの天文学者、エドウィン・ハッブルにちなんでいます。 その後に製作された宇宙望遠鏡も、人名がつくものが多くあります。 スピッツァー宇宙望遠鏡は、1940年代に宇宙望遠鏡を提唱した研究者の名前。 チャンドラX線天文衛星 インド出身の科学者でチャンドラセカールにちなみます。 ハーシェル宇宙望遠鏡 大型の赤外線宇宙望遠鏡で、天王星と赤外線の発見者でもある英国の科学者ウィリアム・ハーシェルにちなみます。 ケプラー宇宙望遠鏡は、17世紀に活躍した科学者ケプラーにちなみます。惑星の軌道の3法則で有名ですが、ケプラー式望遠鏡の考案者でもあります。 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 これは科学者でなく行政官としてNASAの長官も務めたジェイムズ・E・ウェッブにちなみます。彼は有人月着陸のアポロ計画や惑星探査計画などを指揮し、成功に導いています。 ★ ロウソクの光も、直射日光も、両方とも明るいものです。ただ、その明るさが全く違うことは言を待ちません。 では、それはどれくらい違うのか。意外とこれを探すと資料がないのですが、天文学のデータブックで古典的な標準といわれる Allen's Astrophysical Quantities (第4版)の119ページに載っているのをたまたま見つけました(Walsh,J,W.T.,Photometry,3rd ed.(Dover社)のP529が典拠) それによると ロウソクの明るさが0.6に対し、 天頂から降り注ぐ太陽光は165000で、 30万倍も明るさが違います。 その他には、アセチレンランプが10.8、白熱電球のフィラメントが800、快晴の青空が0.2-0.6です。おもしろいのはアーク灯で16000です。なお、時代が時代のデータなので、例えば典型的なLEDランプの明るさなどは掲載されていません。 ★ 星は日常感覚からすると、無限といっていいほど遠くにありますが、本当に無限であれば見えなくなるので、有限の距離があります。では、その星までの距離を測るにはどうすればいいのでしょうか? これにはいろいろな方法がありますが、一番直接的なのは、人間が両目で距離を推定するのと同じ「視差」を使う方法です。すなわち、2カ所から星を見て、2カ所の間の距離と見える方向の違いから距離を測定する方法です。星の距離はうんと遠いので、2カ所には、人類が達成できる最も遠距離である、地球が太陽の向こうとコッチになる。夏と冬、秋と春などの場所が使われました。2カ所間の距離は3億kmです。この地球の半年あいての角度の差を特に「年周視差」といいます。 恒星の中で一番近いのがプロキシマという星ですが(プロキシマは最も近いという意味)プロキシマ(Proxima)の年周視差は、SIMBAD http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/ という天文データベースで調べると、 768.0665ミリ秒角とあります。 5000分の1度であり、ラジアン単位だとざっと30万分の1ラジアンです。実は年周視差は2点間の距離の半分に換算することになっている(太陽~地球間の距離)ます。 小さい角度の場合、 ラジアンであらわした角度×対象までの距離=測定2点間の距離ですので 対象までの距離は=測定2点間の距離/ラジアンであらわした角度になります。 つまりプロキシマまでの距離は 1.5億÷1/30万 ~45兆kmとなります。厳密に計算すると40兆kmであり、1光年は9.46kmなので、4.2光年あまりがプロキシマまでの距離となります。 なお、プロキシマはケンタウルス座という南天の星座の星で、大阪からは見えません。北緯28度以南ならばわかりますが、奄美大島より南で見られます。ただし、明るさは11等と、肉眼はもとより見えず、小型望遠鏡でもとらえるのが困難な明るさです。 |
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