番組制作

当館ではプラネタリウム番組の制作も行っており、これまで様々な内容を取り上げてきました。

ここでは、これまでに私が携わったプラネタリウム番組をご紹介します。


 
オーロラ
2014年2月2日 更新

 学芸員になって初めて制作を担当したプラネタリウム番組です。

 この番組は、2012年に学芸員の生解説で投影していたプログラム「オーロラの世界」を、ナレーション付全天周映像番組に制作し直したものです。制作期間は、2012年6月末~11月末とおよそ5ヵ月間。タイトなスケジュールで進められた制作工程を簡単にご紹介しましょう。

 ※ちなみに、この番組「オーロラ」は2013年11月1日(金)~2014年4月6日(日)、絶賛投影中です!

1.シナリオ制作

 映像にするためには、とにもかくにもシナリオがないと始まりません。ということでまずシナリオ制作です。生解説で投影していた2012年のプログラム「オーロラの世界」を全天周映像用に構成し直す作業から始まります。

 シナリオ作りにあたって大事なことは、"伝えたいことを明確にすること"だと思います(もちろん、科学的に正しい情報が必要十分に盛り込まれていることは大前提の上で)。話の軸となるものがブレてしまうと、ストーリーに説得力がなくなり、わけのわからないものになってしまいます。初めて制作を担当することになった私は、この大事なポイントをぼんやりしたまま進めていってしまったため、後々の工程で苦労をすることになります。

シナリオの一部

↑シナリオの一部(初期のもので現在投影中の内容とは全く違う)

シナリオの一部

↑絵コンテの一部(殴り書きで書いたもの)

2.制作会社の決定

 プラネタリウム担当の学芸員と何度かレビューを行い、8月末にシナリオ原案が完成しました。そこで、制作を委託する会社を決定し、担当の方と打合せをしてシナリオを完成させていきます。オーロラについての科学的な部分については、監修の先生にご指摘をいただきながら進めていきました。同時に可能な箇所は制作に入り、9月以降、シナリオと映像制作が同時進行する形になっていったのです。

3.映像制作

 9月~11月初めにかけて、本格的に映像制作を行いました。オーロラ映像は、CGではなく本物を使いたかったので、現地で撮影された本物のオーロラ映像をいくつかドームで確認し、選定していきました。また、楽曲についてはシーンごとに希望する音楽のイメージを制作会社の方に伝えて、選曲もしくは作曲をしていただきました。

 この段階までくれば、本来は文言のちょっとした修正だとか、演出方法の工夫だとか細かなところに気を配っていけるものです。しかし、前述したように最初、話の軸となるポイントをぼんやりとしたままで進めてしまったため、いろんな人の意見やアドバイスを聞いているうちに、何を伝えたいのか、お客様に何を感じてもらいたいのかがよくわからなくなっていってしまいました。どのように決着をつければよいのかわからないまま、映像の制作は進めないといけない、期限は迫ってくる、本当に焦りました。

 「枝葉が茂りすぎると太い幹がどこにあるのかわからなくなる。もっとシンプルに考えたほうがよい」という先輩学芸員さんの助言のおかげで、とにかく不要なシーンをそぎ落とし、シンプルなシナリオに戻しました。その後で改めて必要だと思う箇所を、重くなり過ぎないようバランスを見ながら追加していく作業を行いました。こうしてようやく、シナリオが本格的に固まっていったのです。

4.シナリオ録音

 11月初め、ある程度映像と楽曲が仕上がってきたころに、シナリオの録音稿が完成しました。このシナリオでナレーションの録音を行います。ちなみに、私はこのとき初めてプロの声優さんとお仕事をさせてもらいました。プラネタリウムで声を使う仕事をしている私にとっては、とても勉強になる機会となりました。声優さんはとにかく滑舌が良い、噛まない、抑揚のつけ方にバリエーションがある・・。もちろんプロの声優さんにとっては当たり前のことなのでしょうが^^;

5.ドーム試写・最終調整

 プラネタリウム投影開始およそ半月前。ようやくドーム試写を迎えました。ドーム試写とは、制作した映像を一度プラネタリウムドームで上映し、映像や音楽、効果音のタイミングなどを最終確認する作業です。パソコンの画面で見ていても、実際にドームで見ると印象が全く違うことがよくあります。例えば、丸い地球の映像がくるくると回転しながら近づいてくるシーンがあるのですが、ドームで見ると回転が速すぎて酔ってしまいました。これはドームで見てみないと気が付かないものです(現在、このシーンは回転をある程度おさえています。しかし、中にはやはり酔いそうになる方もいらっしゃるようです。ごめんなさい)。

 今回は、ドーム試写を2回ほど行い、館内職員からの意見を参考にしつつ最終調整を行いました。

6.上映開始

 こうして、この「オーロラ」番組は2012年12月7日(金)、いよいよお客様に見ていただけることになりました。2013年2月24日(日)まで投影を行いましたが、観覧いただいたお客様はのべ4万人を超え、本当に多くの方に見ていただくことができました。

 ※2013年12月6日(金)から投影している「オーロラ」は、このとき制作した番組に新たなオーロラ映像を盛り込んだ最新バージョンとなっています。まだご覧になっていない方は、この機会にぜひ!