番組制作

当館ではプラネタリウム番組の制作も行っており、これまで様々な内容を取り上げてきました。

ここでは、これまでに私が携わったプラネタリウム番組をご紹介します。


 
宇宙美術館2022②
2022年9月16日 更新

 新しいプロジェクターの明るさ、コントラスト、解像度の高さを存分に活かして、美しい天体映像をたっぷりお楽しみいただくプラネタリウム番組「宇宙美術館2022」。その中で紹介している天体についてくわしく解説する、第2回目です。

 ※「宇宙美術館2022」は、2022年8月30日(火)~11月30日(日)、絶賛投影中です!

2.天体紹介

2-2. 惑星状星雲

 続いて、散光星雲とはまた違った星雲を紹介します。惑星状星雲です。惑星と名前がついていますが、太陽系の惑星とは何ら関係がありません(昔、望遠鏡で見た人々が、小さな丸い天体に見えたため、“まるで惑星みたいだ”、ということで名づけました)。

 

 この番組では、らせん星雲を取り上げています。みずがめ座の方向、約700光年に位置しています。地球からはまるで“猫の目”のようなすがたにも見えますが、もちろん、こうした天体は全て宇宙に立体的に存在しています。らせん星雲は、2つのリング状に拡がる淡いガスが垂直に交わることで、まるでらせんを描いたような形状になっています。

らせん星雲

画像3. らせん星雲

©NASA, ESA, C.R. O'Dell (Vanderbilt University), and M. Meixner, P. McCullough, and G. Bacon ( Space Telescope Science Institute)

( https://esahubble.org/images/opo0432d/ より )


 惑星状星雲とは、星が一生の最後に、自身を作っていたガスを周囲に噴き出すことでできる星雲で、いわば星の最期のすがたと言えます。太陽と同じくらいの質量を持つ恒星は、一生の終わりに近づくと、大きく膨らんで赤色巨星(せきしょくきょせい)という天体になります。その後、星の表面からガスを周囲に噴き出し、最後に中心核だけが残され白色矮星(はくしょくわいせい)となり、周りに放出されたガスが惑星状星雲となるのです。私たちの太陽も、あと50億年後くらいには、このようなすがたになると考えられています。 今回の番組では、らせん星雲の立体的なようすもお楽しみいただいています。よく見ると、中心に白色矮星もちゃんとありますので、ぜひご覧になってください。


2-3. 超新星残骸

 惑星状星雲は星の一生の最期のすがただとご紹介しました。しかし宇宙には、もっと激しく星の最期を迎えた天体もあるのです。それが、超新星残骸です。 番組で取り上げている超新星残骸は、ベール星雲(または網状星雲)です。はくちょう座の方向、約1,800光年にあります。

ベール星雲

画像4. ベール星雲

©NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and the Digitized Sky Survey 2.

( https://esahubble.org/images/heic0712g/ より )


 太陽よりも8倍以上重い星は、惑星状星雲にはなりません。その最期はもっと激しく、大爆発を起こして一生を終えます。この爆発のことを超新星爆発といいます。その時、自身を作っていたガスを周囲に爆発的に散らしていきます。超新星残骸とは、この大爆発を起こした後のすがたなのです。


 超新星残骸として有名なものに、おうし座の「かに星雲」があります。こちらは、実は1054年に爆発があったとされる記録が、日本や中国などに残されています。つまり、いつ爆発があったかが分かっている数少ない超新星残骸の1つです(かに星雲は、今回の番組ではメインで取り上げていませんが、最後のほうで映像のみご覧いただいています)。

 かに星雲に比べ、今回取り上げたベール星雲は、もっと古く、約1万年前に超新星爆発を起こしたと考えられています。約1万年もの間、宇宙空間に拡がり続けたため、星雲の直径は約110光年にもおよびます。この暗く淡い星雲のすがたは、まさに“残骸”…。ということで番組制作担当である筆者の独断で、今回は有名な「かに星雲」ではなく、こちらのベール星雲をご紹介しています。


 続いては、星団の世界へとご案内します。