番組制作

当館ではプラネタリウム番組の制作も行っており、これまで様々な内容を取り上げてきました。

ここでは、これまでに私が携わったプラネタリウム番組をご紹介します。


 
宇宙美術館2022①
2022年9月14日 更新

 2022年2月2日、大阪市立科学館はリニューアルオープンしました。新しく導入された全天周映像システムを使って私が初めて制作した番組が「宇宙美術館2022」です。本番組は、新しいプロジェクターの明るさやコントラスト、解像度の高さを存分に活かして、美しい天体映像をたっぷりお楽しみいただけるような内容にしています。そのためプラネタリウムでは、天体に関する詳しい解説を少なめにしています。そこで、ここでは本編でご覧いただいている天体について、解説をまとめようと思います。

 ※2022年8月30日(火)~2022年11月30日(日)、絶賛投影中です!

1.概要

 宇宙にはさまざまな天体が存在します。また北半球の空で見られるもの、南半球の空で見られるものも異なりますし、季節折々で見られる天体も違います。この番組では、おもに大阪の秋、もしくは冬の空にある天体たちを取り上げています。天体の種類としては、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸、散開星団、球状星団、銀河に絞りました。それぞれの天体の特徴と、個性あふれる色や形に注目いただき、ぜひご自身の“推しの天体”を見つけてもらえたら幸いです。

2.天体紹介

2-1. 散光星雲

 星雲とは、宇宙空間に漂うガスや塵(ダスト)の集まりです。ほとんどが水素ガスでできていますが、他にも様々な原子・分子が微量に含まれています。星雲にはいくつか分類があり、中でも散光星雲は明るく光っている星雲のことを指します。星雲は、元々明るく光るものではありませんが、その中で新しい星が生まれ、明るく輝き始めると、そのまわりの星雲が照らされ、星雲自体が明るく光るようになります。これが、散光星雲です。

  

 この番組では、おもに2つの散光星雲を紹介しています。1つ目がバブル星雲です。その名の通り、まるでシャボン玉のように丸い形に広がっている星雲です。カシオペヤ座の方向、およそ7,000光年の彼方に位置しています。 この泡のように丸い星雲を作っているのは、その中にある恒星です。この星は太陽のおよそ45倍もの質量を持っていて、非常に熱いガスを周囲に放っています(恒星風、といいます)。この熱いガスがまわりにある冷たい星間ガスにぶつかり、丸く泡のような形に拡がっているのです。ただし、左上のほうに冷たい星間ガスが密集しているエリアがあり、そちら側には勢いよく拡がることができないため、丸い泡は非対称に拡がっており、結果、恒星は丸い泡の中心からずれているのです。 恒星の近くには、まるで指のような形で黄色く光っている部分があります。ここにはより濃い星雲があり、恒星からの強い恒星風によって照らされています。この中では、いままさに星が生まれているかも知れません。

 

バブル星雲

画像1. バブル星雲

©NASA, ESA, Hubble Heritage Team

( https://esahubble.org/images/heic1608a/ より引用 )


 この番組では、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたバブル星雲の写真をお楽しみいただいていますが、色は着色されたもので本当の色ではありません。もし私たちがバブル星雲の近くに宇宙旅行して行けたとしても、こんな風に見えるわけではないのです(着色は適当ですが、意味はあります。青い色は酸素、緑が水素、赤が窒素に対応しています)。


 星雲にあるガスや塵は、星を作る材料となります。より濃くガスが集まっているところでは、星が生まれている可能性があります。

 星が爆発的に生まれている星雲の中で最も知られているのは、オリオン大星雲です。オリオン座の方向、約1,400光年のところにある星雲で、3,000個以上もの星が生まれています。特に中心部では非常に明るい星がたくさん生まれており、その恒星風によってまわりのガスが周囲へと押し広げられたため、地球からはまるで鳥が羽を広げたようなすがたに見えるのです。今回のプラネタリウムでは、この大きな星雲を立体的に感じていただきながら中心部まで旅をしていきます。その光景は圧巻ですので、ぜひプラネタリウムでご覧いただきたいです。

オリオン大星雲

画像2. オリオン大星雲

©NASA, ESA, M. Robberto (Space Telescope Science Institute/ESA) and the Hubble Space Telescope Orion Treasury Project Team

( https://esahubble.org/images/heic0601a/ より引用 )


 次回は、全く種類の違う星雲を紹介します。