プラネタリウム投影

天文担当の学芸員として最も大切な業務の一つが、日々のプラネタリウム投影です。

ここでは、投影にまつわる裏話をしていきましょう。


第4回:投影の裏側①
2022年9月8日 更新

 投影準備も万端。いざ、投影開始!

 ということで今回は、投影中の裏話をいくつかご紹介しましょう。果たして解説員は何を考えて投影を進めているのか?ここでしかお話ししない投影の裏側をお見せしましょう。


第一声は丁寧に

 第一声って、もう何年投影を続けていても緊張するものです。特に後ろから解説する私たちにとって、お客様へお届けできるものは"声"しかありません。滑舌良く、スピードもちょうどよく、音質も聞きやすくを心がけていますが、やっぱり人間だもの…。噛むときもあります。第一声を噛むっていう経験は私はさほどありませんが、そうなったらとても焦ります。新人の時は特に、アワアワして次から次へと噛んでしまう、なんてこともやってしまってました…。


振り向いてくださると嬉し恥ずかし

 私は最初に名前を名乗って挨拶をしています。後ろの解説台におります、ということもお伝えするのですが、その時お客様がこちらを振り向いて見てくださるととても嬉しく思います。恥ずかしさもありますが、ナレーションではなく生身の人間がその場でお話ししているよ、ということを実感いただくために大切なやり取りだと思っています。


"街中で星を探してみましょう"

 日の入りシーケンスが終わった後、大阪の夜景の中でも見られる星を紹介します。私はこのタイミングで、お客様自らに星を探してもらうように投げかけることをよくします。例えば、「今日は夏の大三角が見えています。明るい3つの星をつないでできる細長い三角形、ぜひ探してみましょう」なんて言いながら、探してもらうのです。もちろんこれは、お客様とのコミュニケーションの一環でもあるのですが、実は私にとっては、お客様のテンションを図る物差しにもなっています。ここで多くの方が空を指さしながら見ていただいているか、それとも静かに空を見上げているか、全く違うところを見ているか、などなどを細かく見て、"あ、今日は静かに見たい人が多いんだな"とか、"今日はテンション高いお客様が多いな"とかを感じつつ、その後の投影の雰囲気作りに役立てています。もちろん私自身がお客様の気分を盛り上げるべく、敢えてテンションの高い雰囲気作りをすることもあります。


すべては暗順応のために

 上記のとおり、まずは街の夜景がある中で明るい星をいくつか紹介しています。その後、街明かりを消して満天の星をお楽しみいただくのですが、私は投影45分間の内、満天の星にするまで大体10分強(長くて13分ほど)かけています。それはもちろん、普段皆さんが見あげるであろう都会の空で見つけやすい星をまずは紹介したいという思いからですが、もう一つ大きな理由があります。それが、"暗順応"です。人間の目は明るいところから急に暗くなっても、その暗さに慣れるまでには10分以上時間がかかります(逆に明るいところに慣れるのは数十秒あれば十分です)。そこで、ドーム内が少し暗い夜景での星空観察に少し時間を割いて目を暗さに慣れさせた後、夜景を消して満天の星にしているのです。そうすると、より多くの星を楽しむことができます。満天の星を存分に楽しんでいただくための、敢えての遠回りでもあるのです。


満天の星を存分に味わってもらいたい

 大阪の夜景を全て消すと、ドーム内は真っ暗になって満天の星が見えてきます。私はここで、お客様に一度目を閉じてもらうようにお願いします。"私がゆっくり5つ数えてから目を開けてください、と合図をしますので、それまで目を閉じて待っていてくださいね"と言いながら、夜景を消しています。そして、目を開けていただいたときにはキラキラしたBGMを少しかけて、しばらく声を出さないように心がけています。これも、私がふだん大切にしている場面なのですが、満天の星とお客様自身との時間を作りたい、という思いがあります。私の解説の前に、まずは満天の星を見あげて、存分に浸っていただきたいのです。その時、"きれいやな~"とか、"スゴイ!"とか、"星だらけやな~"とか、"こんなにあったら訳わからんなあ"とか、抱く感想はそれぞれだと思うのですが、どういう内容であれ、お客様自身から湧き出る感情をまず大切にしてほしいと思っています。


 さて、ここまででも随分長くなってしまいました…。裏話はまだまだありますので、シリーズ化したいと思います。続きはまたの機会に。お楽しみに~。